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バーフバリ 王の凱旋 ≪完全版【オリジナル・テルグ語版】≫のくりふのレビュー・感想・評価

4.5
【“王の天才”のアキレス腱】

この版も“バフぢから”とでも呼ぶべきものが漲っており、堪能しました。

インタ版で充分面白かったから感想ほぼ同じですが、デーヴァセーナの“返歌”追加は語りとしても効果的。他は、より油がさされて滑らかに動き出した、との実感です。

一方、二度目にみたら気になった、というところも出てきた。つらつら書いてみたいと思います。

後半お家騒動のヒートアップに、グズグズした印象を受けた。監督が「兄弟間の確執や思い、シヴァガミの内面をより詳述したかったが、時間内に収められなかった」と発言しているが、その影響かと思った。

個々で言えば、まず父アマレンドラの“無垢という弱点”が弱い。彼って“王として天才タイプ”で、本能的にかくあるべき行動をしてしまう。

たぶん失敗から学ぶことを知らなくて、疑うことを知らない。学んだ上で下々の心を知る…という経験もなかったのでは? だからバラーラデーヴァの嫉妬心などにも無頓着なのでしょう。この無垢さを“弱点”としてより立てれば、ヒリヒリするドラマになったと思う。

バラーラデーヴァは“悪役に割り振られて”いるが、上記とも絡むが、そんなに悪い奴かね? と思った。物語の外側から悪を盛られた感じで、ちと可愛そう。ダークサイド化の経緯が不明。

アマレンドラ個人への憎しみばかり募らせて、一国独裁への野望が不鮮明。現場主義なのはエライしね。“上から目線”度も薄くて。最終バトルの盛り上がりに絡むが、敵の目線まで早々に降りて来ちゃうんだよねこの人。

シヴァガミは相変わらずの猛女で、だから王国を率いていけるのもわかるし、それが慢心に転びがち、なのも納得なのだが、今回はより“愚かさ”が気になった。それでも、本作での後悔があってこそ、前作OPの「何としても赤子を救わん!」の執念に涙してしまうのですけどね。

他、展開として、これはインタ版でも膝カックンだったが、せっかく取り戻した母ちゃん、大事なトコで放置すんなよ!…に膝カックン×2。お役目から言えば、ここはアヴァンティカが守んなきゃダメでしょう!タマンナーの見せ場としても欲しかったところ。

あと野暮なツッコミだが、25年間幽閉され、老いた筈のデーヴァセーナの顔があれほどふくよかなのは何故?(笑) 長く生かすためいいもの食べさせてもらってたのかな。王族だし。運動もしないし、…ってこと?

もひとつ、インタ版でも終盤戦ではダレてしまったのだが、基本が平行移動だったからか? と今回思った。子マヘンドラの物語とした時、滝登りに始まり、ひたすら上を目指すべきでは?と思うわけです。

例の“人間おむすび投げ”は空に放たれますが、放物線なんですよね。マヘンドラ最後の一太刀も、壮大な(笑)ジャンプを見せるも、やっぱり放物線。どうもこの辺りに不発感があります。

せっかく物理的頂点として、ピラミッドか!みたいに高ーいマヒシュマティ城があって、天辺?に一度、悪のご一同を置いてもいるのだから、そこまで登りつめての一騎討ち、が見たかったですね。

高ーい巨(虚)像の扱いはわかり易かったですが、逆にあれの行方で決着がついたも同然だから、そうはさせるか!と続く執念の頂上戦が欲しかった。

…で、やっぱアレですよ、決着後は百階分くらいの階段落ち!それでも死ななくて、クッション代わりになる“枯れたふりする怨念の塊”まで転がったところで…目の前にボロボロの足。

…見上げると、手の中で揺れ盛るものが…これですよこれ、オレバーフはこれ!(笑)

…なんてことも妄想して楽しみましたが、“バフぢからの漲り”の前では小さなコトなので、堪能できたコトには変わりません。よって点数的にもインタと同じくらい。

また本作と前作は、前後篇ではなく補完し合って一本、とも思うため、やっぱり総じて同じくらいの評価です。

いま、関連書籍を遊泳中なのですが、これがまた面白い。後でそこから追記する気になったら、自己レスなどで続けたいと思います。

<2018.6.8記>
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