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翔んで埼玉のkomoのレビュー・感想・評価

翔んで埼玉(2018年製作の映画)
4.4
今までに観た邦画で一番笑いました!
魔夜峰央先生の漫画のファンなのですが、衝撃のパタリロ実写化に続いてまさかコレが映画化されるなんて…!
冒頭から魔夜先生ご本人(+先生のご家族様)が登場してまで『これはフィクションです』と念押しされるあたり、本当に何でもありの作品なのだな、という予感が走りました(笑)

GACKT様の麻美麗、あれほど硬派な外見なのに人間性が柔軟で、百美くんのみならず誰もが着いて行きたくなるようなまさにカリスマ。
伊勢谷友介様も京本政樹様も『強い男』でありながら、無骨というよりは耽美寄りのお人で、まさにこだわり抜かれたキャスティング。
二階堂ふみちゃんの美少年役も違和感がなくてよかったです。迫力のある罵倒を度々見せながらも少女漫画然とした雰囲気づくりもバッチリで、唇を指でなぞりながら歩く姿なんか本当に魔夜先生の絵のようでした。
加藤諒くんはパタリロ経由でキャスティングされたのかと思いきや、まったく別口としての採用だったそう。『埼玉の一般県民代表』としての平凡で真摯な役が似合ってて良かった!

隠れ埼玉県民である麻美麗(GACKT)が転入したのは、壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が生徒会長として権力を握る白鵬堂学院。
校舎の敷地内では普通に白馬が歩いていたり、より上位の生徒がいる教室内では美しいハープが爪弾かれていたり。
その反面、埼玉出身の生徒が寄せ集められているのは校舎から離れた木造の小屋で、そこの生徒は文明から切り離されたスタイルでの自習を余儀なくされています。

この『階級の差を描く上でやれる表現は全てやりました』感がもう、徹底的にハメを外して作られた娯楽を力強く叩きつけられているようで、言い方は不自然かも知れませんが『映画を観に来た甲斐がある!』と思わせてくれました。

学園ラブコメのような序章から物語は一変し、埼玉を虐げ続けている巨大な陰謀との闘いに身を投じてゆく麗と百美。
シリアスなシーンでもちょくちょくネタが盛り込まれているおかげで一瞬たりとも間延びせずに観られました。
まず『埼玉デューク』とか『エンペラー千葉』とか『サイタマラリア』とか『埼玉解放戦線』とか、固有名詞の語感が強すぎます。

千葉の海岸のシーンが好きです。ドラマチックな演出の脇で真剣に行われている地引網漁…!
千葉チームの海女さん2人も表情と動作が力入りすぎててかなりツボです。
【祈祷師】(登場時テロップ付き)も面白すぎてツライ…。
埼玉ホイホイで捕まる埼玉県人を魔夜先生の息子さんが演じてらして、もうカオスです。
それと、キスシーンで変な笑いが起こる映画は初めてでした(笑)

埼玉人が中心になって起こした暴動は最終的にとんでもない軍勢になります。どのくらいすごいかというと、画面にいたら絶対に目立つはずのGACKT様がどこにいるんだかわからないくらい!笑
昨年ボヘミアン・ラプソディのライブエイドのシーンを観て「こんなに人口密度が高い映像を観ることはしばらくないだろう」と思っていたのですが、(規模と趣旨はまったく違うとはいえ)こんなに早く人口密集映画にまた出会うとは。

中盤までは自分と違う土地の相手をとにかく貶めてゆくディスり合戦映画でしたが、終盤はなかなか綺麗に終着します。
闘ってきた者たちが互いを労うシーンや、麗と百美のダンスシーンは普通に美しかったです。

それからこの映画は入れ子構造になっていて、その『外側』の住人であるブラザー・トムさん一家が、やがて麗と百美が牛耳る組織の『内側』へ入って行く展開も面白かった。
そして最後、急速に畳み掛けられる埼玉アゲ。
と、エンディングを飾るはなわの『埼玉県のうた』。今住んでいる土地(静岡県)に不便を感じていない私も、とうとう埼玉県民が羨ましくなってしまいました。

最初から最後までずっとザワザワした笑いに包まれていた劇場内がとても心地よかったです。
そういえば、群馬県が『秘境』呼ばわりされていた理由についてはあとから種明かしがされますが、茨城県のディスられ具合に関しては原作同様何の救いもなかった…(笑)
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