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バーニング 劇場版のyumeayuのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
3.5
"グレートハンガー"

夕日に照らされ、ひとり優雅に踊るヘミ。
その姿をジョンスとベンは静かに見つめる…。

村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を原作に、イ・チャンドン監督が舞台を日本から現代の韓国に移して描いたミステリードラマ。

全体的に物静かな雰囲気や散りばめられた伏線とメタファー、そしてラストの余韻など、確かに村上春樹作品らしさを感じる。
"衝撃のラスト"とアピールされていたため、サスペンス要素が強いのかと思っていましたが、実際はちょっと的外れなキャッチコピーで、本質はもっと深い人間ドラマでした。
原作は未読ですが、村上春樹作品なのだから、単なるミステリー・サスペンスじゃないことは考えればわかりますよね。
それにしても随分安易なコピーだな…。

そういう意味では推理作品的なミステリーというより、"ミステリアス"な雰囲気が漂うドラマでした。
それを象徴するかのように、ジョンス、ヘミ、ベンといった主要キャラクターは総じて生きる意味を見失っている"グレートハンガー"であり、なんだか危うくてどこか掴みどころがない人間でした。
3人ともバックボーンは違えども、実はすごく似ていて鏡写しのような存在といえる。彼らの生き方は何も特別なことではなく、現代の若者の焦燥感や将来への絶望感みたいなものを感じました。

個人的には『ウォーキング・デッド』シーズン7以来、久しぶりに見たスティーヴン・ユアンが非常に魅力的でした。
『ウォーキング・デッド』だとムードメーカー的な愛されキャラだったけど、今作ではクールでニヒルな笑顔が似合うインテリなキャラクターでした。これはこれで新鮮味があってカッコ良かった!

さて問題の"衝撃のラスト"について。
この終盤の展開は果たして事実なのでしょうか?
それともジョンスの妄想なのか?
衝撃かどうかはさておき、いろいろな捉え方ができるのは面白いなと思いました。
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