このレビューはネタバレを含みます
きっとこれからもふとした時に何度も思い出してしまいそうな映画。色んな受け取り方が可能だからこそ心の深いところを揺さぶり続けるような。但し人に気軽にオススメするような映画ではない。
人の脳は一度疑い始めるとあらゆる点と点を繋げては全てが怪しく見えてしまう。果たしてジョンスがベンに対して抱く疑いは真実なのか、それとも盲信なのか。冒頭でヘミがみかんを剥くパントマイムをしながらジョンスにコツを教える。
「ここにみかんがあると思うんじゃなく、みかんがないことを忘れればいいの」
ヘミを失ったジョンスの最後の行動はそのどちらによるものなのか。
そしてジョンスに不幸な暮らしを強いていると言っても過言ではない父親の存在。怒りっぽくて人と親しくしようとしない父親と彼は結局似た者同士なのか。果たしてラストシーンはジョンスが本当に起こしたことなのか。それともあれはジョンスの妄想の中なのか。(事実、彼は後半から小説を書き始めている。だからラストは父親のことを書くべきだと言われたジョンスが自分の中にある父親的な部分を噴出させて作り出したフィクションかもしれない)
何が真実かわからないまま終わることで「人を疑う」という行為に対して様々な思索を巡らせた。村上春樹的だし記憶に残る映画だった。あと、ユアインは本当にいい役者だなぁ。口をポカンとあけるだけで何度もユアインじゃないんじゃないかと思ってしまったほど役に入り込んでいた。