Hondaカット

バーニング 劇場版のHondaカットのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.4
89点。イ・チャンドン監督の新作で村上春樹原作!という事前の期待にじゅうぶんに応えてくれた、深い深い余韻が残る作品。

村上春樹原作のもつ、世界には不確かさが日常のすぐ隣にある、というのを、現代の韓国に置き換え映像化すると、その「不穏さ」がより明確に見えてくる。それが映画のほとんどを占め、終始緊張感にあふれる。

しかし、その中に確かにある人間性、つまりは希望のようなもの、を体現する主役三人が見事の一言。三人がそれぞれ「世界とどう折り合いをつけようとしてるのか」を、セリフや行動だけでなく空気感でみせられたよう(またそれを“画面には”見せないキャラクターもいる)で、特にヘミの、魂が滲み出すような夕日バックのシーンは映画史に残る名シーンだと思う。言葉ではとても言い表せられない感情がそこにあった。

決して雄弁には描いてないキャラクターの【深い部分】を感じる、というのは、映画という表現媒体の可能性の極致なのかもしれない。芝居や台詞の裏側に仕掛ける演出。見えない部分にあるもの。他の芸術メディアではまずできない表現であり、観る人との架け橋のひとつになる。映画とはそれ自体がパントマイムのようなものなのだ。

インタビューによると監督が自作に込めるものは「世の中に対する意味のある問いかけ」であるという。感動作や、エンターテイメント作と違い、それを作るのはとてもとても辛い作業なのです、と…。