うわーこれはちょっと忘れがたい作品です!
夢はあるが、金も才能もない。
とにかく未来が光り輝いては見えないし、ただボンヤリとその日暮らしをする日々。
昔感じた(今も時々感じる)ヒリヒリとしたあの感じがすごく居心地が悪くて、でも同時になんか愛おしいような、不思議な映画でした。
ミステリー映画ですが、優れた青春映画だと思います。
新人女優チョン・ジョンソの演技が最高に魅力的で(初めてコップに唾を吐く姿で人を好きになりましたw)、独特なダンスやパントマイムはもちろん、その一挙手一投足から目が離せませんでした。
彼女はパントマイムのコツは「あると思い込むのではなく、無いことを忘れる」ことだと話します。
彼女の不在をめぐる話に突入する後半では、何度も何度もその言葉が頭の中を駆け巡りました。
存在よりも不在によって、より本質が見えてくる寂しさは誰しも一度は感じたことが
ある感覚ではないでしょうか。
もちろん彼女の言葉通り、彼女が「ここにいないことを忘れて」しまえば、いくらかまともに生き延びることはできるかもしれない。
しかし、主人公はきっとそうしたくなかったんだと思います。彼女は確かにここに存在していた、ということを深く自分の心に刻むような決断に胸が張り裂けそうになりました。
やがて陽は沈む。でも、あの息を呑むような美しい夕陽を見て「今日が一番良い日」だと言った彼女の姿は、永遠に忘れたくないと思いました。