JT

バーニング 劇場版のJTのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.1
"ある"と思っていたことがなく
"ない"と思っていたことがある
そして心は夕焼けと共に焼き尽くされた

2019年34本目: 原題『BURNING』

村上春樹の『納屋を焼け』を映像化した韓国映画

作家を目指すジョンスが幼馴染のヘミに偶然出会い、肉体関係に発展し恋心を抱く
そのふたりの中に割って入る謎多き男ベン
"僕は時々ビニールハウスを燃やしています"ベンの奇妙な告白から不穏な空気が流れ出す...

散りばめられたあらゆる伏線と多くのメタファーによる巧みなストーリーテリング
"ビニールハウスを焼く" "井戸の中に落ちる"など
隠喩を用いた表現で謎に呑まれてしまう
答えをひとつに導き出すことは不可能で
完全に観客の個々に解釈を委ねられる

パントマイムを披露するヘミの言葉で"そこにあるように思うのではなく ないことを忘れる"とある
"ないことを忘れる"
つまり"ないことなどない"
"ない"と言う概念を消し去りそこに"あるのだ"
消えかかる光が印象的でそれは確かな存在、微かな希望を表している
ヘミのジョンスへの気持ちも過去の記憶も彼女には確かにある
ジョンスは"ない"と思っているから"ある"ことに目を向けない
悲しみと憎しみと怒りと妬みが渦巻く中
世の中の不条理と謎深い人の心理に呑み込まれ
彼らの心は焼き尽くされたのだ


⬇︎自分の解釈(ネタバレ)⬇︎







ヘミは殺されたのか?
おそらく殺されてはいない
全てを捨てて失踪した
夕焼けのように
そしてジョンスがベンを刺し殺して燃やした描写についてこれはジョンスの小説による出来事であって実際には起きていない
最終的にこれはジョンスと言う闇を抱えた青年が一歩前に踏み出す物語だと感じた
失った一生に一度あるかないかの大切な出会い
貧富の差、社会的格差、北朝鮮問題など
ジョンスにとっての世の中の謎
その深い悲しみと憤怒の感情
"確かにあった想い"を捧げて小説を完成させた
怒りに身を任せる父を破り、あの頃の記憶と気持ちを生きさせるために作家として表現する
"ない"と思ってたことを"確かな存在"にするために
焼き尽くすのではなく燃え盛るために


追記
最後の描写で刺されたベンがジョンスに感謝してるように見えるのは気のせいでしょうか?
なんだかんだジョンスとベンは近しく相通ずるものがあったんじゃないかな?とか思ってます
想像膨らませてるときりがないですね〜笑