おさかなはフィッシュ

バーニング 劇場版のおさかなはフィッシュのネタバレレビュー・内容・結末

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

過去、パントマイム、猫、欲望の対象、電話の主、ガールフレンド…。執拗なまでの不在の連続に、半ばホラー映画的な緊張を強いられた。(映画で何かが「無い」のは、何かが現れる前兆であるため。)

スマートフォンで繋がる、バーチャルで手ざわりのない現代の生活。友人の友人が寄り合うパーティーの空虚。
あらかじめ失われた時代を生きる三者三様の“グレートハンガー”たちの、生の実感のない生活。どこからともなく立ち上りやがて消える、煙のような生活。

ジョンスはヘミを「見つけ」、ベンを殺し、火をつけて燃やすことで、煙は出所を得る。
言葉の通り「火のない所に煙は立たぬ」。
(不在だらけの家の中でも、ナイフは消えずにそこにあった。血、なのか。それでも、見つけて手に取ったのはジョンス自身であるはず。その後何が起こるにしても、殺したことでジョンスの人生は始まった。)

不在は不在のままで終わる村上春樹っぽくはなかったけれど、長尺だったこともあり、映画的にはすっきりと終わってよかった。



落日の薄闇の中、半裸のヘミが踊る異常な美しさ。
風で木々の葉がざわめく、その音の方がよほど確かな、輪郭さえもやがて消え行くおぼろげな時間。
音楽も相俟って、激ヤバいシーンだった。



ヘミ役の女優さんがかわいすぎた。ベンの、ディーン・フジオカ風の絶妙な胡散臭さ(失礼)もよかった。
シネマ・ジャック&ベティにて鑑賞。