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バーニング 劇場版のメルのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
3.3
村上春樹の「納屋を焼く」をイ・チャンドン監督がどう解釈し、どのように広げ、どう着地させたのか興味があった。

女友だちが連れて来た「納屋を焼くことが趣味の男」と知り合いになった途端にその女友だちが姿を消してしまったという掴み所のない独特の小説世界を、監督はサスペンス風にして最終的には復讐劇へと昇華させている。

現代の韓国が舞台なので、「若者の失業率の高さがOECDの中で最も悪化している」というニュースがTVで流れたり、財閥批判とも取れる「韓国にはギャッツビーが多い」という台詞が出てくるのは斬新な感じがした。

また主人公の両親の描き方、プライドが高過ぎて堕ちていく父親とお金に執着する母親も納得。

只、居なくなった猫、井戸に関する逸話、「メタファー」という言葉など原作には登場しないが村上春樹がよく使っているものをそのまま出してるところにムラカミワールドですよ!というチープなアピールを感じた。

曖昧模糊とした現象や不思議な世界観の原作に対して、白黒はっきりつけて悪者には制裁を!という怒りのエネルギーを発散させている映像表現は如何にも韓国的。

後半の説明的な流れは主人公の妄想であり彼の小説のストーリーだと思うのだけど(女友だちの部屋でパソコン打ってたし...) 、それはそれで展開としては有りなのかも知れないが余りに激情的で残念。
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