柏エシディシ

ビリーブ 未来への大逆転の柏エシディシのレビュー・感想・評価

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)
4.0
映画などでUSカルチャーにそれなりに触れている日本人にもお馴染みの"RBG"(なんせ、先日鑑賞したレゴムービー2にも登場してるし!)
Metoo以降、名前を見かけることも多くなりましたが、その偉大さ、功績の大きさを知るには良い機会だな、ぐらいに思ってましたが、なかなかどうして良い映画でした。

ギンズバーグがハーバード大学の数少ない女性学生として入学した時分から、女性という理由で弁護士の道を断たれた挫折、そしてやがて女性権利向上の旗手として活躍しはじめる頃を描いた伝記映画。

実在の人物の偉人立志伝的映画としても優等生なお話運び、そして法廷モノ映画としてのジャンル的な楽しみもしっかり担保されていて予想以上に面白かった。
ハリウッドの職人監督的なイメージのあったミミ・レダーですが、彼女の文句なく代表作、最高傑作だと思います。

未だ現役バリバリで活躍している方の物語ですから、ある意味作品の行く末や結末は判っている訳ですが、それでも、作品のテーマや彼女自身の葛藤や成長をリアルに感じさせる、細やかな演出が本当に素晴らしい。

作品のテーマを強烈に印象づけるタイトルロール。
彼女の優秀さとキャラクターを簡潔に説明する学生生活の描写。
序盤で印象的な、弁護士事務所の面接のシーン。言葉ヅラは真っ当なのに、心うちが見てとれる役員の男の視線。
監督の演出力は、ギンズバーグのプライベートサイドの描写でも冴え渡り、登場人物たちの実在感と説得力に深みを与えています。
母娘喧嘩の後、夫ルースが娘の様子を見に行ったあとのふたりの短いやり取りなど印象深い。

RGBというアイコンを体現するという難役を知性と芯の強さという持ち味でこなしたフェリシティ・ジョーンズはもちろん、素晴らしい。
そして本作の要は、才色兼備「旦那」アーミー・ハマー。ある意味完璧なファンタジックな人物なんだけれど、上手く共感し易いキャラクターに演じてくれてます。

ギンズバーグを単純な「すごい人」ではなく、自分の娘や教え子のような若い世代や、周囲の人々に影響を受けながら、「今の」ギンズバーグになっていく過程を説得力を持って描いている事がとても好感が持てるし、「法律」の限界や矛盾より「可能性」に託す結論は、真っ当で、だからこそ貴重だと思います。
あと法廷映画の先達たる「アラバマ物語」へのさりげない引用も素敵。これ、ギンズバーグ母娘の実際のエピソードなのか?脚本家の創作か?でも、そんな台詞の妙も映画の魅力だと思う。
柏エシディシ

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