みさお

ビリーブ 未来への大逆転のみさおのレビュー・感想・評価

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)
4.2
1960~70年代の米国で、男女平等を求め法曹界で闘った女性弁護士「ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏」の姿を描く映画。

その頃アメリカは、「女性だから」という理由だけで、ロースクールを主席で卒業しても法律事務所には就職できなかった。女性は主婦になるのが当たり前で、女性だからというだけで就けない職業も多数あり、クレジットカードも自分の名義では作れないという状態だった。アメリカで性差別が本格的に修正され始めたのは、そんな大昔のことではないんだね。
そんな時代に政府を相手に絶対に勝てないと言われた男女平等裁判に挑み、大逆転の末勝利を収めた女性が彼女だ。
過去の幾多の判例で決して認められることのなかった男女間の人権侵害の事実を、どうやって国に認めさせるか?という難事に挑戦するルースたちが、『法律の解釈は天気の影響は受けないが、時代の空気には左右される』という“事実”に改めて着目することで活路を見出す。


彼女を演じたフェリシティ・ジョーンズ。「ローグ・ワン/スターウォーズストーリー」でのジン・アーソ役が記憶にあるが、やっぱり逆境に負けない女性に最適だったね。
しかもマーティンは、なんて素晴らしい夫なんでしょう‼︎
彼がいたからこそルースは勝利できたんですね。この男女平等裁判は、やはりルースとマーティン夫婦の愛情と信頼、平等が実現していなければ勝つことは出来なかったでしょう。
子供達の世話やその他話の展開が早くて、細かいところは割愛されているようだけど、裁判の最終反論で彼女が述べた言葉は素晴らしかった。何回も見直しました。




ネタバレだけど、文字起こしを載せます。



政府側の「ルースが過激な社会変革を求めている」という言葉を受けて話し始めるルース

ルース:
「過激な社会変革」
100年前、弁護士を目指したM・ブラッドウェルは、イリノイ裁判所で働こうとして女性を理由に拒否された。
彼女は正義を求めて最高裁に訴えました。イリノイ州は勝利を確信し、1人の弁護士も立てませんでした。その通り、彼女は負けました。性差別が争われた裁判はそれが最初でした。100年前です。

「過激な社会変革」
65年前オレゴン州で女性が男性同様残業したいと訴え、ブラッドウェルの先例を理由に敗訴、2件の先例に3件4件5件と先例が増えていき、10年前女性の陪審を求めて上訴したホイトが敗訴。この負の遺産がこの法廷で問われているのです。
あなた方が守ろうとしている文化や伝統、アメリカのモラルはもはや存在しません。
一世代前の私の学生が逮捕されました。服装が猥褻だからと。
65年前なら私の娘は法律の道に進めませんでした。
100年前なら私はここに立つことも出来なかった。
178の法律が男女を差別しています。政府がリストを作ってくれました。せっかくです読んでください。子供達の夢を阻む法律です。

判事:
100年分の先例を覆せと?

ルース:
法律が時代遅れになる前に新しい先例を

判事:
だが、それらの法律は憲法に基づいている。「女性」という言葉は合衆国憲法に1語もない。

ルース:
「自由」もありません判事
----中略----
国を変えろとは言いません。
勝手に変わるからです。
国が変わる権利を守って欲しいのです。
私達の子供達は法律に縛られています。性差別で機会が奪われてしまう。214項のような法律が差別を認めているからです。そのような法律は一つ一つ変えなければなりません。手始めとなる先例を作ってください。あなた方には誤りを正せるのです。

控訴裁判所は全員一致で前判決を破棄しルースが勝訴しました。


現在、ルースは25年以上、米最高裁で判事を務めている。アメリカでは歴代2人目の女性判事で、現在の最高齢判事でもある。彼女の道徳的な高潔さ、少数派意見を述べるときの理路整然とした冷静なタフさは有名で、政治的にリベラルな層や、女性、法曹界、若者たち等から絶大な尊敬を集め、もっとも尊敬される女性として「RBG」と呼ばれています。

《ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の語録》

1970年代前半ベトナムの空軍勤務中に妊娠した女性兵士に服役を続ける場合、基地病院での中絶を選択肢として与えられた件について

「子供を産むかどうかは女性の生き方・幸福と尊厳にとって核心的な決断です。それはその女性本人が自らのために決断すべきことなのです。その決断を政府が女性にかわって行うならば、その女性は、自らの選択に責任を負うべき成熟した大人として扱われていないということにほかなりません」


2018年MeToo運動についてラジオインタビューで尋ねられた件について

「運動が起こるのは時間の問題だったと思います。あまりにも長いあいだ女性は沈黙しつづけ、自分にできることは何もないのだと考えてきました。しかしいまや法律は女性と男性を問わず、ハラスメントを受ける人々の側にあります。それは素晴らしいことです」
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