MasaichiYaguchi

ジュディ 虹の彼方にのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)
3.7
「オズの魔法使」や「スタア誕生」でのジュディ・ガーランドの素晴らしい歌声に心打たれた一人だが、大スターにありがちな悲惨な晩年を送っていたことを本作を通して初めて知った。
映画は47歳の若さで急逝する半年前の1968年冬に行ったジュディのロンドン公演の日々を描いて、彼女の光と闇を浮き彫りにしていく。
この作品では晩年とコントラストを成すように、彼女の若かりし頃の「オズの魔法使」や、ミッキー・ルーニーとコンビを組んだミュージカルシリーズの撮影舞台裏が度々登場するが、私には“登り坂”にある彼女の日々には、後の彼女の荒れた芸能生活の萌芽が既にあったと思う。
十代のジュディは体質的に太り易かった為に強制ダイエットさせられたり、肥満抑制薬として覚醒剤を使用させられたりしている。
このことがジュディの心身を病まさせ、後の撮影への遅刻やボイコットを引き起こし、それが“加速”、“増幅”するに連れて自ら窮地に追い込むことになっていく。
昨年冬に麻薬取締法違反で人気女優が逮捕されて世間を騒がしたが、かくの如く薬物は身体はもとより人生までも破壊してしまう。
この作品を観ていると、ジュディはハリウッドによってミュージカルスターに祭り上げられたが、その反面、スターの輝きを維持する為に人生を含めてスポイルされてしまったと言える。
「虹の彼方に」ある愛や幸せを希求しながら、「身から出た錆」のような自滅的要素もあって掴むことが出来ないジュディを切なさや悲しみを交え、主演のレニー・ゼルウィガーが素晴らしい歌唱を含め、全身全霊で演じていて圧倒されます。