るるびっち

私は、マリア・カラスのるるびっちのレビュー・感想・評価

私は、マリア・カラス(2017年製作の映画)
3.5
波乱に満ちた人生である。
美貌のオペラ歌手、世紀の大富豪との不倫。
大富豪の裏切り、恋のライバルは暗殺で未亡人となった元ケネディ大統領夫人。
天井知らずのスキャンダル。文春でなくとも飛びつく大ネタ。

しかし、本人自身は実は地味な普通の女性かもしれない。
ステージママの言いなりでストレスから太った思春期。
年上の夫に利用された時期。
普通の主婦になりたかったし、白馬の王子を待っていた。
けれど近寄るのは、ハイクラスでエグイ年長のオッサンばかり。
本人も親の離婚で父性愛に飢えていたのかオヤジ好み。
喉に負担のかかる難しい演目をこなし、多彩な感情表現でソプラノの地位を引き上げた才能。
それらは本人の望みとは逆に、嫉妬と反感、強烈なバッシング、スキャンダル、劇場からの反発など、彼女を苦悩の大海に投げ込んだ。53歳という若さで心臓発作。疲労困憊で生きる力を奪われたのではないか?

巧みな心理描写と超絶ボイスで絶賛された割に、約10年と絶頂期は短い。それは喉に負担の掛かる演目をリクエストされたせいだ。
映画の出演に慎重だったように本人はマスコミの作った傲慢な女王ではなく、臆病な夢見る女性だったのかも知れない。
プライベートでのあどけなさにそれを感じる。そこがこのドキュメンタリーの至宝。
何しろマリア・カラスの「シェー」を見られるのだから!!
日本の漫画も既に海外に輸出されていた時期だから、彼女が赤塚漫画のイヤミを知っていてもおかしくはない。
しかも同じ側の手足を上げる正しいポーズだ(日本人でも大抵、手と逆側の足を上げて間違えている人が多い)。
マスコミの作った傲慢貴婦人ではなく、カワイイマリアが見られるプライベートフィルム満載のドキュメント映画である。
るるびっち

るるびっち