MasaichiYaguchi

私は、マリア・カラスのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

私は、マリア・カラス(2017年製作の映画)
3.6
没後40年を経ても、オペラ歌手として語り草となっているマリア・カラスは、その人生が燦然と輝く栄光とスキャンダルで彩られているので幾度も映画化されているが、彼女自身の「言葉」と「歌」だけで構成されたこのドキュメンタリーでは、一人の女性としてのマリア・カラスが浮き彫りにされている。
普段は余り馴染みのないオペラだが、このドキュメンタリーで彼女が熱唱する、ビゼー「カルメン」の「恋は野の鳥」、ヴェルディ「椿姫」の「さようなら、過ぎ去った日々よ」、プッチー二「トスカ」の「歌に生き、恋に生き」等、これらの名曲を聴いていると各々の作品世界に引き込まれてしまう。
特に彼女の人生を暗転させた1958年のローマ歌劇場での演目、ベッリーニ「ノルマ」の「清らかな女神よ」は聴いていて複雑な思いが去来する。
華やかな世界にいる彼女だからこそ、そのエキゾチックな美貌や傑出した歌唱や演技力に嫉妬されての嫌がらせや、スキャンダルを捏造され続けたのだと思うし、だから体調不良による公演キャンセルが〝大炎上〟したり、プライベートな色恋沙汰がゴシップとして取り上げられてしまうのだと思う。
そのことがどれだけ彼女を傷付けたのかが、本作では映し出されていく。
そして愛した人の裏切りが更に彼女を苦しめ、ダメージを与えていく。
ファンから愛され支えられ、生涯オペラ歌手として、そして愛に生きたマリア・カラスの実像に迫った本作を観ると、改めて彼女の歌を聴き直したくなります。