Zhivago

バグダッド・スキャンダルのZhivagoのレビュー・感想・評価

バグダッド・スキャンダル(2018年製作の映画)
4.6
「汚職は民主主義の必需品だ」、本作の準主役である国連事務次長が言うこの言葉が重苦しく突き刺さる。
 硬派でシリアスで真面目な社会派作品。テーマが大きすぎて社会派という一言では片付けられない。国連の石油食料交換プロジェクトにかかわる巨大な汚職という事実を実際の元国連職員が描いた原作を元にしているし、準主役は実在のセバン事務次長だ。
 汚職の話は映画にしずらい。汚職は善悪の境目が曖昧で、利益を得る人間が複雑で多数に亘るからエンタメにするのが難しい。実際本作も面白さを犠牲にしている。
 が、冒頭の事務次長の言葉にもあるように、国連という組織の汚職の持つ善悪の不明朗さ、を劇的ドラマにしたりせず、シリアスに描いた。こういう真っ正直さみたいなところにすごく好感が持てる。善悪の境目の曖昧さをそのまま描いているところはジョンフォードにも通じるものがあると感じた。
 人間はしょせん汚いものだという現実の上に数字を出そうとする事務次長、正しいことをしようとする主役。その境目は曖昧だ。最後のほうでキプロスに逃げた彼が弁明するシーンがあるが、その一言に我々が生きるグローバルな現実世界が垣間見れる。
 というのも、この巨大な汚職マネーを支えているのは日本でもあるからだ。日本の莫大な国連拠出金が関係者のリベートと中東のテロリズム資金に回っていたという現実。けっして他人事ではいられないテーマを映画館で突きつけられたという事実を前に我々はどんな批評ができようか。
 めっけもんのなかなかの意欲作。今年の洋画ベストのトップ5候補に入ってくる。
Zhivago

Zhivago