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バグダッド・スキャンダルのsamiamのネタバレレビュー・内容・結末

バグダッド・スキャンダル(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

権力者による不正の暴露に関する質の高い映画の上映が続いているが、これはまた非常に重厚で見応えのある作品だった。流行りのスパイ映画の様な派手なアクションはないが、一つ一つのシーンがリアルで緊迫感溢れている。非常に賢く勇敢で正義のために命を賭しているクルド人の通訳者ナシームが、最後の最後に希望が見えたところで、車に仕掛けられた爆弾テロにより殺害されてしまったシーンが衝撃的であり、また非常に哀しく泣けた。

国連が実施した640億ドル約7兆円の人道支援のプログラムにおいて約200億ドル約2兆円の金が汚職により流出したという。また、100億ドル約1兆円はフセイン政権に渡り、イラク戦争後にシリアに逃れた党幹部がその資金でISを立ち上げたという。衝撃的なのは当時のアナン事務総長を始め、国連トップとその家族がこの汚職に関わっていたため、国連は事実調査を拒んでいるが故に未だに真実がなかなか明らかにならないとのこと。

原作は、国連でこのプログラムに携わった本人が執筆しており、この映画のほとんどが事実と語っているという。

このようなことを何も知らなかった私は、仲間が国連職員となり広報を担当するとのことでニューヨークに旅立ったところで大変誇りに思っていたが、事実の一部を知り、非常に残念で物悲しい気分。それでも色々なことを教えてくれたこの映画を観れたことは良かった。

原作者のマイケルは今はジャーリストとして、最近解放された安田純平記者と同様に、中東の危険な地域でジャーナリストとして取材をしているとのこと。危険を冒して事実を伝えようとする彼等の正義感と熱意を心から讃えたい。
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