いの

LETO -レト-のいののレビュー・感想・評価

LETO -レト-(2018年製作の映画)
3.8
レニングラード1980年代前半
ということは、ソ連のアフガニスタン侵攻はまだ終わっておらず(兵役のための検査のような場面もあった)、そしてペレストロイカ以前という時期にあたる。西側諸国の文化はこっそりとアンダーグラウンドで。

インフル病みを観てからまだそれほど日が経っていないところでの観賞。ロシアの体制を批判しているキリル・セレブレンニコフ監督作品ということで、わたしはついついその文脈で観賞しようとしてしまった。80年代の音楽もほとんど知らないからテキトーなこと書いてしまうけど、セックス・ピストルズ風にとかディランならどうするのかとか、そんな会話もあり、西側に憧れ西側の影響をたくさん受けながらも、そのうえで自分たち音楽におけるアイデンティティ-をどう獲得するのかといった話でもあるように感じ、それは当時のソ連に限らず日本でもおなじじゃなかろうかと思えてきた。芸術はいつも模倣から始まり、そのうえでの唯一無二の個性といったものをどう確立していくのかといったところに葛藤や模索があるのかもしれない。そこを通らないと突き抜けられない壁があるのかも。

・・・なんてことはさておき、電車の中とかバスの中とかで始まるミュージカル仕立ての妄想がとても楽しい。イラストつきでお洒落でカッケー。雨が下から上にあがっていくイラスト好き。それら妄想も、頭のなかは自由なんだぜっていうことの象徴のような気もしてきた。妄想の場面で出てくる狂言回しの男性が監督の立場かな。マックスと妻ナターシャと、新人ヴィクトルの三角関係の行方には目が離せなかった。ものすごく微妙なところを実にうまく切り取っていると思う。特にマックスの寛容であろうとする姿に、寛容であろうとしてでもホントは妻に他の男性とキスなんてしてほしくないからバランスを崩していってしまう、そんな葛藤に切なくなりました。セピアっぽい海。海っていつも郷愁を誘う。スクリーンの向こうの海。実在の人物に想を得て、そのうえで脚色を加えたとのこと。キノって「映画」って意味なんですね。意味まみれの観賞をしちゃったけれど、いちばん胸をつかれた台詞は、「意味のない歌をつくりたい」というマイクの言葉だった。それ大賛成。


妻役のナターシャを演じた女性はイリーナ・ストラシェンバウム。めっちゃ可愛い。「T-34」も「アトラクション」も観てました。役によって全然違うのさすが。
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