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幸福なラザロのnaoのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.0

社会から断絶した小さな村を舞台に、そこに生きる純粋無垢な若者ラザロに突如としてやってくる激動の日々を描く

実際の事件が下地になっている物語ですが、史実そのものを主題に据えた作品ではなく、寓話的なものがメインに描かれます。

権力への抗議や、進歩による貧困の超克。独占された富の分配と共有
現代にはびこる様々な問題を時系列の変化を用いることで、感覚的に今も昔も根本的な問題は変わっていない事を示してくる。
領主は村人を搾取し、村人はラザロを搾取する。搾取する者を悪人となじるのはたやすいが人間が生きる限り、誰かが誰かを搾取し続ける

この映画が伝えるものは、この世で生きていく上で誰のことも疎まず、人を信じ切ることの尊さ、そして難しさ
人が生きている中で善を善とは認識せず、人の行動の裏にあるものを考えてしまう。その事実を無情に突きつけられる

ラザロという純粋無垢な光が、社会を生きる中で、何となく忘れがちな事を改めて伝えてくれる作品です
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