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幸福なラザロのkaoruiのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.5
新しい才能に出会えることが映画ファンであることの醍醐味なんだけど、
イタリアの新星、ロルバケル監督は凄い!
狭い部屋の中、人々を手持ちカメラでひたむきに撮る。後頭部がカメラを塞ごうが、白熱灯がハレーションを起こそうが、貧しく虐げられた人々の生々しい脈動を活写する。
悲惨な状況が徐々に明かされていく中、
絵の中は生きることの悦びに溢れている。
皆が口々にラザロを呼ぶ。幾重にも重なるタバコの葉の中を巡るラザロ。幻想的ですらある。
ノスタルジックな空気にこのまま浸っていたいなーと思ったところにイマドキのイタリアンなマイルドヤンキーをブッ込んで、時空を歪ませる。あれ?これ、現代の話?
ラザロが転落するシーケンスや、村に誰もいなくなる状況は唐突でもあり、乱暴にも感じたが、違和感をぶち込みながら説明的なショットを敢えて排除してシーンのつなぎでストンと腑に落とす語り口は新しい感性だと思う。
時空を超えて繋がる後半、骨髄に染みる素晴らしい場面の連続だ。
冒頭の狭い部屋の白熱灯のシーケンスが反復され、鍋で月を模したり、車を皆で押しているとオルガンの音が追いかけてきて鳴り響いたり、どのシーンもイマジネーションに溢れる。
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