しめじろー

幸福なラザロのしめじろーのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.3
思ったよりファンタジックで教訓めいたお話でした。キリスト教には詳しくないので、見終わった後「聖ラザロ」で検索して、ははあこういう話があるんだな、と思っていると検索二番目の「金持ちとラザロ」が目に留まり、ああこっちか!こっちのラザロだわ!と腑に落ちたあと凹みました。へこみますよ…
脚本と見せ方が上手いですよね。冒頭、のどかで貧しい小作人集落で起こるちいさな事件。そこから世界がぐるりと丸ごと変わってしまう驚きは『ブリグズビー・ベア』を思い出します。本作はそこからさらに仕掛けがあり、さらに大きく変わる世界。何が起こったのか、ラザロと一緒に混乱する私。そして観客が状況を把握できるころには、あまりに変わってしまった状況、そしてその中でも何も変わっていないもの(むしろ悪化しているもの)、ダブルで衝撃が来るというダイナミックな作りになっています。往復ビンタくらった気分です。
そんなわけで無垢な世界からいきなり連れ出されるので、ラザロが見つめる世の中の辛さ、人間の悲しさ、愚かさみたいなものが、がら空きボディにがつんと響きます。この構成ほんと上手いですね。みんな必死、みんな余裕がない。弱者が弱者を搾取していく世の中…。そんな中で、ラザロが選んださいわいとは。
見終わって、「金持ちとラザロ」のたとえ話が重くのしかかります。今、私の前にラザロが現れたら?せっかく現れたラザロに、金持ちの兄弟は慈悲を向けられるのだろうか?本当にへこむ映画でした。心に余裕を持たなきゃな…。

家の近所すぎて逆に行ったことがなかった、ユジク阿佐ヶ谷で鑑賞。手作り感があってすてきな映画館でしたー。そういう意味でいろいろ思い出に残る映画になったな…