ポーランドの名匠 パヴェウ・パヴリコフスキ監督作品
冷戦下の1950年代、東側と西側の間で揺れ動き時代に翻弄される恋人たちの姿を描く
副題で勝手にミュージカルと思い込んで避けていた作品ですが、『イーダ』があまりにも完成されている映画だったので鑑賞
やはりこちらも凄まじい完成度の高さで、美しい歌声もさることながら、モノクロ映像の美しさがもはや異次元の領域にまで達している
相変わらず動きのない抑制されたカメラワークかつ、理想的なほどに省略されて描かれる超濃密な88分
びしばし決まった完璧な構図も健在で、ラストショットなんか鳥肌もの
いうまでもなく非常に芸術性の高い作品ですが、ストーリーは極めてシンプルなラブストーリーで、意外とベタではありますがとにかくこの二人の切なくも激しい愛に観ている側も気持ちよく翻弄されてしまう
とはいえ背景には非常に複雑な政治的背景があり、冷戦の重苦しさもしっかりと存在している
そんな背景にある政治情勢や揺れる心情を、セリフではなく歌で表現するあたりも素晴らしい
空耳でおよよ〜って聞こえるのも好き
対照的な二人が激しく惹かれあい、時に引き裂かれながらも深く深く愛し合うというシンプルなラブストーリーを、これほどアーティスティックに仕上げてしまう監督のセンスに脱帽
キャストも最高で、間違いなく主演のヨアンナ・クーリグさんとトマシュ・コットさんあっての作品
無駄なさすぎる演出なども含めて万人に受けるような映画ではありませんが、これほど映画的な語り口のラブストーリーは初めて観たかもしれない
思い出せば思い出すほどまた観たくなる
傑作
〈 Rotten Tomatoes 🍅92% 🍿81% 〉
〈 IMDb 7.6 / Metascore 90 / Letterboxd 3.9 〉
2021 自宅鑑賞 No.231 U-NEXT