ナツミオ

COLD WAR あの歌、2つの心のナツミオのレビュー・感想・評価

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
3.8
WOWOW録画鑑賞
『イーダ』(2013)を観て気になったパヴリコフスキ監督作品。
昨年に録画していたのをやっと鑑賞。

冷戦下のポーランドとフランスを舞台に引き裂かれた2人の男女の15年に及ぶ恋愛模様。
音楽が2人の心情描写として効果的に使われる、恋愛ドラマの佳作。

カンヌ国際映画祭 監督賞受賞
ヨーロッパ映画賞 作品・監督・主演女優賞含む5部門を受賞
(ノミネート)
英国アカデミー賞 監督賞と外国語作品賞を含む4部門
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞
アカデミー賞 外国語映画賞(ポーランド代表作)、監督賞、撮影賞の3部門にノミネート。

原題 『Zimna wojna』/『Cold War』(冷戦)

2018年ポーランド・英・仏製作
モノクロ作品
監督・脚本 パヴェウ・パヴリコフスキ
共同脚本 ヤヌシュ・グウォヴァツキ、ピョートル・ボルコフスキ
撮影 ウカシュ・ジャル(イーダ)
音楽 マルチン・マセッキ
出演 トマシュ・コット ヨアンナ・クーリク ボリス・シィツ アガタ・クレシャ ジャンヌ・バリバール セドリック・カーン

(あらすじ-kinenoteより追記)
1949年冷戦に揺れる共産主義国・ポーランド。歌手を夢見るズーラ(クーリク)とピアニストのヴィクトル(コット)は音楽舞踊団の養成所で出会い、互いに激しい恋におちる。だが、西側の音楽を愛するヴィクトルは、政府に監視されるようになり、ベルリン公演時にパリへの亡命を決意し、ズーラに一緒に行こうと誘うが、約束の時間に彼女は姿を見せず、結局ヴィクトルは単身パリへ。
1954年やがて、歌手になったズーラは公演で訪れたパリでヴィクトルと再会、幾度かのすれ違いを経てパリで共に暮らし始めるのだった。ところが、ある日突然ズーラはポーランドへ帰ってしまう。そんな彼女のあとを追うヴィクトルに、思いもかけぬ運命が待ち受けていた……。

監督の両親がモデル。
『イーダ』のウカシュ・ジャルのモノクロ映像。
ポーランドの田舎風景とパリの夜の対比が美しい。

音楽は、ポーランド出身のジャズ・ピアニスト、マルチン・マセッキ。
エンドロールで流れるピアノ曲の余韻。

主演のズーラ役ヨアンナ・クーリクは『イーダ』でも脇役で出演。
本作でヨーロッパ映画賞の主演女優賞受賞。
最初の舞踏団のオーディション場面から、オーラ漂う美しさを感じる。そして歌も上手い‼️
パリでのシーンも熱演。
1つ疑問は、なぜズーラは自由のパリを捨て帰国したのか・・・

助演のイレーナ役アガタ・クレシャも『イーダ』で主人公の叔母役を演じたが本作では早々と姿を消すのは残念だが、印象に残るベテラン女優さん。


以下ネタバレあり

時系列と印象に残ったシーン
・1949年ポーランド
「マズレク舞踏団」

「あの子を採用するのね」

「あなたを密告していた」

・1951年ワルシャワ
舞踏団は人気となり各地へ
パーティ会場で、鏡を背景に奥行きを見せる映像。

「世界の果てまで一緒よ」

・1952年東ベルリン
ソ連占領区の検問所付近、ズーラを待つヴィクトル。

カチマレク(シィツ)とパーティに出るズーラ。

1人で国境を越える後姿。

・1954年パリ
「レクリプス」
ジャズの音色
ピアノ演奏するヴィクトル

カフェで誰かを待つヴィクトル。
「もう閉店だよ」
そこへ現れるズーラ
短い再会
「この辺りでいいわ」
別れて暫くして振り返り、ヴィクトルへ駆け寄るズーラ。

部屋に戻ったヴィクトルがベッドでパートナーと交わす会話。
「女を買ってきたの?」
「そんな金は無い。好きな女性に会った」
興味無さそうなパートナー。
流石、自由恋愛のお国柄⁈

・1955年ユーゴスラビア
マズレク舞踏団の公演
客席にヴィクトルの姿を見て動揺するズーラの表情
無表情のカチマレク
強制送還

・1957年パリ
ジャズクラブ「レクリプス」
ジャズの音色、華やかなパリ

〜2つの心と4つの瞳

パーティでヴィクトルの元恋人に嫉妬するズーラ。

酒浸りのズーラ

ズーラが自分のレコード
「あなたから遠く離れて」
を投棄てヴィクトルと喧嘩に。

姿を消したズーラを追いポーランドに行こうとするヴィクトル。
仏領事館員「帰国はおすすめしません。」

1959年ポーランド
収容所のヴィクトルに面会するズーラ
看守を買収し10分間席を外させる
「君に耐えられる普通の男を探せ」
「そんな人いない・・・あなたをここから助け出すから」

1964年ポーランド
「夏の歌フェスティバル」
ヴィクトルを釈放するため
カチマレクと結婚していたズーラ
。側には金髪の息子。

「私を連れ出して」
「そのために来た」

バスから降りた2人。
田園地帯の何もない交差点。
『イーダ』で観た風景。
風に揺れる麦畑
左手の大木

廃墟の教会での誓いの言葉
錠剤を飲む2人
ベンチに座る2人
固定されたカメラから2人が消えて、背景に揺れる麦畑

エンドロール
〜両親に捧げる

オフィシャルサイト・パヴリコフスキ監督のコメントを読み、納得‼️

(作品オフィシャルサイトより抜粋)Wikipediaよりリンクあり。

「ズーラとヴィクトルというこの二人は部分的に私の両親を基にしている。彼らはそれぞれに別のパートナーとくっついたりしながらも、とても激しい関係を結んでいた。それは、ある意味、究極のラブストーリーだった。(中略)
まとめ役となってくれる何かが必要になり、音楽がすべてを統合し、移り変わってゆく人間関係や時間や場所を見極めるのに手を貸す3番目の登場人物となった。」

冷戦を背景に、
『イーダ』より恋愛ドラマ要素が強い、こちらもイイ作品です。
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