カラン

COLD WAR あの歌、2つの心のカランのレビュー・感想・評価

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
5.0
つーんって、情感の領域の埋もれてたり、抑圧されていた箇所を刺激される。第二次世界大戦後のポーランドからフランス、そしてまたポーランドへと、映画の舞台はとてもとても遠いエモーションなのだけれども、奥深いところを強めに押してくる。

あっけない?そうだろうか。収容所に入れられて手が動かなくなって、人格改造されても、人によっては生きていけるんだろうけどさ。風が吹いたんだよ。

『パプーシャの黒い瞳』(2013)とか、『異端の鳥』(2019)とか、モノクロームの美学を追求した作品に連なるのだろう。最終的に本作はタルコフスキーの『鏡』に繋がるほどの想像力を発揮することになったのであり、2人の語りえぬ恋はついに一陣の風を吹かせることになった。さらに、ありえないことだけれども、グレン・グールドのバッハ「ゴルドベルク変奏曲」のアリアのデジタル録音版(1981)に接続するのである。ポーランドの教会外の麦畑から、タルコフスキーへ、そしてまた、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオのグールドへと。


レンタルDVDで試聴してみて、これはと思ってBlu-rayを購入して本視聴。Dolby true HD5.1chのマルチチャンネルサラウンド。超絶的な音声である。本編にも、主人公がポーランド民謡を録音再生する場面がでてくるほどで、極めて優秀なマイク。エンジニアリングも優れており、環境音をふんだんに取り入れながらリアに逃すことでセリフや歌声の純度を維持して、ステージを踏みならす等の低音も極めて情熱的に響き渡る。

これまでの映画体験のなかでは、本作が音響最優秀賞である。爆音で楽しみたい。
カラン

カラン