[困難な時代の運命の愛について] 100点(ATB)
前作「イーダ」で私を熱狂させたパヴリコフスキの新作。紙芝居のようにスルスルと無情に話が進んでいき、音楽や画面構成が神がかっているいつものパヴリコフスキ映画。前作とは打って変わって冷戦期の欧州を駆け巡る運命の恋の物語。「イーダ」に"音楽"という更なるパワーが加わって即効感情がサチってしまった。ショットのパヴリコフスキが音楽を持って、まさに鬼に金棒じゃないか。
1949年ポーランド。郷土音楽を収集していたヴィクトルとイレナは音楽学校Mazurekを設立し、純粋に音楽を表現する集団として彼らを育て上げるが、時代の波に飲み込まれてソ連礼賛ソングを歌う羽目になる。そんな中、奔放な生徒ズラに恋をしたヴィクトルは20年近く結ばれることのない"運命の愛"を育むことになる。
と話はいつも通り大仰ではないんだが、前作にも増して音楽がふんだんに盛り込まれたことで映画そのものの感情表現が非常に豊かになり、画面の静謐さやモノクロの画面と融合する三つめの作用を得た。これによって破壊力が「イーダ」に比べて格段に上昇し、我々の感情を揺さぶりまくる。
やがて互いを傷付けあうことでしか互いの愛を確かめられなくなったふたりは喧嘩別れと再会を繰り返す。ラストは最早必然となった永遠の"別れ"であり"再会"である。泣いた。
ズラのファムファタール感が素晴らしい。モノクロ映像にするから一人だけ異質であることを際立たせるためにブロンドの女優を選んだのだろう。
どうやったらこんな作品が出来るのか。弟子入りするか。