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COLD WAR あの歌、2つの心のBluegeneのネタバレレビュー・内容・結末

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

第二次大戦直後のポーランド。音楽家のヴィクトールと歌手志望のズーラは恋に落ちるが、反体制分子として監視を受けたヴィクトールは西側へ亡命する。ズーラは彼についていくことを拒み、民族舞踊団で歌手として成功した。数年後、パリでジャズ・ピアニストとなったヴィクトールは、舞踊団の海外公演でパリを訪れたズーラと再会する。鉄のカーテンに阻まれながらも互いへの思いは消えることはなかった。

見ている間ずっと、二人は東西に引き裂かれたまま悲恋に終わるか、ズーラも西側に来てハッピーエンドになるか、どちらかだろうと思っていたので、エンディングには驚いてしまった。ズーラは合法的に西側に脱出したにもかかわらずポーランドに帰国し、ヴィクトールも彼女を追って-投獄されるとわかっていたにもかかわらず-帰国するのだ。

映画の冒頭で、ヴィクトールは農村地帯をまわり農民たちの歌を録音している。民族音楽への愛情はこの映画の根底に流れるテーマとなっていて、だからこそズーラはパリになじめなかったのだろうなと思う。二人の思い出の曲がなんだかありふれたシャンソンになってしまった時、たとえ自由があっても自分の歌が奪われるならここにはいられない、と帰国を決意したのだろうか。

ズーラが帰国後にどういう扱いをされたかははっきりと描かれないのだけれど(ヴィクトールは速攻で逮捕され、15年の刑期で鉱山の強制労働に送り込まれる)、黒髪のカツラをつけてマリアッチを歌っていたところを見ると格下げされたのだろうか…。ズーラは民族舞踊団のマネージャーだったカツマレクと結婚しているんだけれども、それはたぶんヴィクトールの刑期を短縮してもらうためだったんだろう。

肉体労働で手を痛めピアノを弾けなくなったヴィクトールと、酒に溺れてマズルカも失ったズーラ。ズーラはヴィクトールに助け出してくれと懇願し、二人が向かったのはかつてヴィクトールが歌を集めていたときに通りかかった教会。共産主義体制下で廃墟のまま放置された教会の祭壇で二人は結婚の誓いをたてる。そのあとこの世からオサラバさらばするための薬を飲み、田舎道のバス停に座って「あっちのほうが景色がきれい」って道を渡り、姿が画面から消える。カメラはそのまま二人が座っていたベンチを映し、つむじ風が麦の穂を揺らして終わる。

モノクロのクールな映像に加え、登場人物もあまり感情を表に出さない。主人公二人の恋愛はとても激しいはずなのに、冷たい手触りのする不思議な映画だった。ポーランドに行ったときに風景が北海道と似てると感じて親近感を覚えたんだけれど、冒頭の雪の中を歌を集めてあるくシーンを見るとやはり気候が似ているようだ。寒い国の映画である。
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