うみぼうず

ある女優の不在のうみぼうずのレビュー・感想・評価

ある女優の不在(2018年製作の映画)
4.0
長回しが特徴的なロードムービー風の不思議な映画。様々なものを象徴していて、特にラストの車窓からの回しは印象的。これから先の道程が真っ直ぐではなく険しい道だが、真っ白に希望を持って進んでいく、ということかと受け取った。

観る前にイランの知識はニュースで知る程度しかなかったが、主たる3人(4人)は実名で出演しているという。パナヒ監督の事情を知ってから観ると、彼の苦悩がよく分かる。常に一歩引いているのは脚色もあるだろうが、女性達に譲っているかのよう。
サラン村は基本的にいい顔はするが独自の風習慣習に縛られていて、閉塞感を感じさせる。自分もあの村に生まれていたら、マルズィエのように飛び出したくなる気持ちはよく分かる。
あの文化圏では他人をもてなす行為自体は推奨されているんだろうし、少し打算的な部分もあるのが妙に生々しい。
思い返すと、男性は慣習に囚われているが、女性は素直に動いている人が多かったように思う。それも監督が描きたかったことだろうか。

原題は『3つの顔』、邦題の『ある女優』は主に出ている3人の女性、それぞれが"今は"現場にいないということを表しているのだろうか。邦題付ける人、今は分かるがだいぶ捻ったな…。
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