ある女優の不在の作品情報・感想・評価・動画配信

「ある女優の不在」に投稿された感想・評価

有名女優のもとに送られてきた女優志望の少女の自殺動画。
真偽を確かめにその女優とパナヒ監督が少女の村へ向かうのだが、このミステリ要素が力強いので非常に牽引力がすごい。
とはいえメインテーマは予告編や英題『3 FACES』からも明らかなように時代に翻弄される3世代の女優たち。
個人的に閉鎖的な村社会、村八分、偏見、慣習を嫌悪しているのでかなり刺さった。
や

やの感想・評価

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わりと寝た。
@早稲田松竹
「人生タクシー」よりも先に本作を観たゆえ、まだジャファル・パナヒの真髄には触れられていないのかもしれないが、それでも十分に凄いと思ってしまった本作。とにかく、ジャファル・パナヒという存在自体が、イラン映画界の希望なのだろう。「羅生門」的な人間の本質に迫った作品が多いのがイラン映画の特徴であるが、その白眉たるのが彼の作品。素晴らしい。
「ミステリーかと思うと見間違う、別の主題を提示する辺境への旅」


若い女性から自殺を決意する連絡を受けた人気女優と監督が、女性の住む辺境の村に向かう。

イランの現状描き続けるジャファル・パナヒ監督が、今も根強い女性差別を静かに提示しつつ辺境の村の生活も感じさせるドキュメンタリーな雰囲気も漂う良作。

スマホ縦位置画面の動画から始まり、夜道を移動する狭い車内でのクローズアップと長回しなどで、やや説明的ではあるが、目的と謎が提示される。
車内と暗い夜道がコントラストとなり不穏な雰囲気を醸し出して、観客を引き込む演出と撮影は中々良い。ちなみに撮影は監督がフランスで入手したデジタルカメラらしいが、コンパクトな機動性を活かした画面構成と映画的な色調や陰影がキチンとあるルックで良い。

個人的に思うのは、二人が乗車するクルマが最近生産終了をアナウンスされた三菱パジェロで、外国映画でこれだけ長時間登場するのは珍しいと感じた。

ネタバレあり

映画自体はミステリー調ではあるが、謎解きやサスペンスに主眼が置かれているのではなくて、人気女優(現在)と往年の名女優(過去)と芸能を志す少女(未来)の三人が、イランの女性たちが絶えず受けている苦難の象徴として描き、静かに告発をしてくる。

道中に出会う人や村人は、素朴でありながら、何処か閉じており、行方不明の少女に冷淡な反応で、村の中で娘が孤立していることが分かる。

彼女を探しに訪れた人気女優も、一見丁重な姿勢で迎い入れられるが、深いところ変わらない。実名で本人演じるベーナーズ・ジャファリの彫りの深い表情と真っ赤な髪が印象的で存在感もあり素晴らしい。

往年の名女優は、イラン革命前の卑しい存在として村八分にされて息を殺すように住んでいるのは、根深い女性差別を感じさせ、何故か同時期に活躍した男優(実在した人)は、村人から男の象徴としてリスペクトされているのに。

現在・過去・未来を象徴する女性三人が集う場面や娘の親への説得場面は、省略されており解り易い回答を観客に提示せず想像させるなどの演出のメリハリもうまい。

イラン映画は、殆ど観た事が無いと記憶しているが、中々知ることのないイランの辺境での生活やそれぞれの人達の立場を、分かりやすく興味を持続させながら堅実に描かれた映画でジャファル・パナヒ監督作品をもっと観たと思わせる良作。
snatch

snatchの感想・評価

4.3
ここは、銀河系の遥か彼方…の惑星かと思うくらい強固な封建的な土地でした…
イランの田舎の村で女優を目指し猛勉強をして難関の芸術大学に合格したのに、彼女が生まれ育った環境ルールはそれを許さない。芸事は役に立たん、そんなことより家畜の世話だ、女は嫁に行け、従わない女はバカだ、その家族は村八分だー‼︎😱
…酷過ぎると思う一方、村人の言う通り、ガスも電気も水道も滞りがちで、現代社会から取り残されたようなデコボコ一本道の果てにある土で作ったガレキのような村…男女通う小学校だけはあるようでしたが…変われるわけがない。
イラン政府から二度逮捕され、二十年間映画製作を禁じられているこの監督さんは、映画製作を禁じられ自殺した女性の記事を見て、自分には何が出来るだろうと、自宅軟禁の中この映画を製作したそうです。監督が、主人公である大女優と一緒に村に真相を探しにいく監督役も演じています。

冒頭のシーンの緊迫感に私も主人公同様に取り乱され、女性の被るチャドル同様に真実を見せない村の奥へと入っていく主人公達よそ者に、村人が投げかける不信の空気に縮まりはしない距離を感じ、あるお爺さんの信じるあの習慣に言葉を失い…それはそうなるのー⁉︎…😨
そして、🟡その雄牛🟡がそんなに大事か、そーかそーか、そりゃそうだがその雄牛も男らしい男優も爺さんあんたも、女あってこそだぞ😤
でも、唯一のこの監督さんの視線には、ほんとホッとします。
あと同じ女性として、イラン革命前、現代、未来へと描く3人の女性の閉じ込められた空間に心から痛みを感じ入る。そして、夜のあの小さな狭い小屋に宿る自由の美しさの場面、そしてついに決着が‼︎ …ああ、ラストへの幕切れ…そこから息吹き返す希望、さらに被る◯◯の群れ…

最初は師匠アッバス・キアロスタミ監督のように黙々と進みますが、中盤から雄弁に物語る映画だと思いました。
う〰︎ん😌なかなかいい映画です🎬
厳しい芸術環境ながらも、深いメッセージと揺らぎのない映像が合わさったイラン史の力強い映画なのではと思いました。
イラン映画にご興味持ったら、ぜひぜひ観てみてくださいませ🇮🇷
はない

はないの感想・評価

5.0
シスターフッドの観測者ジャアファル・パナヒー
こんな爽やかなイラン映画久々で劇場で観なかった自分をブン殴りたいです。Sar be hava!
こういう映画もあるんだなあ。新鮮で面白かった!
イランの村社会は日本と変わらないのかもしれないし、むしろ世界中に普遍的なものなのかも。
保守と羨望と嫉妬。

パナヒ監督も出てるけど、どこまで脚本でどこまで本当の村人の様子なのかわからない、でもまぁそれは分からなくてもいい。

村の家、入り口前の1mちょいぐらい上がったテラス空間がかなり良い。行きたい。
サラームサラームって挨拶して、おじさんたちめちゃ集まってくるのとか、紅茶めっちゃ出されるのとか、イランが懐かしくて個人的にめちゃ良かった。
結局色んな用事を集中させた事で早稲田松竹での上映をスルーしてしまい途方に暮れかけた際のフィルマークスの使いやすさ。
なんとU-NEXTで配信されてるじゃないですか!
と、早速観ましたが、
前にも評で書いた通り、事前に予告編を観てからだと大分衝撃度は薄まるのを実感。
だからと言って映画館で予告編観ない様にするには目をつむってるしかないな、と心に誓ったわけであります。

もう、最初の画面の切り替わりで「スゲーーーー!!」となった次第で、その映像の美しさはどんなカメラ使っとんねん、と唸る一方。
そして師匠であるキアロスタミの「桜桃の味」の世界観に自分のテーマを持ち込んだ様な内容。
閉鎖的な村では携帯もあるし電話もある。
しかしあの崖の一本道から供給されるライフラインへの有り難さや閉鎖感、有名人へのもてなしと偏見、そして家畜は村に到着し、代々受け継がれる血への尊厳や正当化。
物語中、途中の雄牛の配置とシャールザードの存在への言及が唐突過ぎる気もするが、映画の伝えたいことへの観衆の目を向けると捉えれば納得出来ない事もないかと。
日本でも村八分や田舎ならではの逸話やルール、共存があるが、今回の作品に関してはそこまで否定的な描写もなく、パナヒ監督の親が住んでた故郷での撮影というのもあって「村から何かを変える」という法則や試みがあったのかとも思う。
桜桃の味は酷評しましたが、今思い返しても相当なインパクトがあった事にも気付いて反省。
これまで観たパナヒの作品の中でも最も映画っぽい(フィクション色が強い)作品。
村社会とイランの国としての姿が重なるなど。そこにパナヒがいるだけで批判じゃないけどメッセージになる。
確か『人生タクシー』も早稲田松竹で観たはず。パナヒの映画観るのはこれが2本目だけどかなり好きだ。

岩切一空監督の映画の作り方に一番近いのって実はパナヒなんじゃないか。

ほとんど車載カメラみたいな映像ばかり、長ーく回してほとんど割らない。決して切り返さない。無駄がない。制約の中でしっかり物語る熟練の術。尊敬します。

原題の「3 Faces」もいいけど『ある女優の不在』って邦題はいいなぁ。確かにどの女優も不在なんだよな。上手い。

【一番好きなシーン】
崖から落ちた雄牛が狭い一本道を塞いでいるシーン。
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