猫とフェレットと暮らす人

ブラック・クランズマンの猫とフェレットと暮らす人のネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ブラックパワー(黒人の状況)とホワイトパワー(白人至上主義)の対比をコメディ要素をトッピングして、独特の演出を挟み込み、人種差別問題の事を知れる、実話を基にした、潜入捜査刑事映画。

テーマにある人種差別について、分かりやすくちゃんと描いていると思えるのですが、なんせ、私が日本人なので、ちゃんと理解できない部分が多いです。人種差別について私の知識と経験が不足しているってのを、改めて考えさせられました。

ちゃんと描かれてるんだろうなぁって事は、映画からとっても伝わってきています。
主人公のロン・ストールワース刑事(ジョン・デヴィッド・ワシントン)が警官に採用される場面から、黒人であることで差別的事柄に耐えられるかって質問されてますし、採用されてからもですし、やっぱり、終盤の爆発事件でパトカーで駆け付けた白人の警官に黒人だということで勘違いされて拘束されそうになった事が物語ってますね。

黒人の集会では、黒人の置かれた社会的状況が分かるし、とっても勉強になりました。

勉強になったと言えば、KKKの白人至上主義についても、KKK支部長ウォルター・ブリーチウェイ(ライアン・エッゴールド)の醸し出す雰囲気と過激派支部員のフェリックス・ケンドリックソン(ヤスペル・ペーコネン)のサイコパスな雰囲気が凄かったです。

一番怖かったのは、フェリックスの奥さんの「昔から黒人を殺すのが夢だった」発言ですね。イカれてますよね。

有色人種全般を差別しているし、それを物語る言動から、恐怖を覚えました。ちゃんと描かれると思ったのは、KKKの人たちもなにかしらの権利を奪われた気分になっているというのが、ちゃんと描かれてるんだなぁと思ったのです。
正当な理由とは思えないですが、歴史的にこれまで、白人が仕切ってきた社会に別の人が入ってきたので、自分たちの権利(既得権益)が奪われてる気分になってるんでしょうね。
KKKの人たちも怯えてるし、追いやられそうになってると思い込んで、それに反発してかなぁと読み取ってみたり。

それにしても、日本に住んでいる私には、上澄みのふわっとしたところしか分かってない気がします。まぁ、それでも価値はあると思っています。

そういう重大な人種差別のテーマをコメディ要素と潜入捜査っていうドキドキさせられるエンターテインメントとして描いているのは、やはり映画って楽しみながら勉強にもなるので素晴らしいなぁって思いました。

この映画のテーマを素晴らしく描いた監督のスパイク・リーですが、日本人の私がこの映画のテーマを上手く捉えるのが難しいよねってニュアンスの事をコメントしたことがあるらしく、90年代に来日した際に「アメリカには肌色で差別する人がいるが、日本は見た目ではわからない、出自で差別する人がいるから厄介だ」と日本では、肌の色じゃない差別はあるよね。てかどこでも差別ってあるよね。って指摘してるそうです。
ほんと、重い差別問題と映画のエンターテインメントとのバランス感覚が素晴らしい監督スパイク・リーですね。

まぁ監督スパイク・リーといえば、独特の演出も有名で、今回は、学生が主催したクワメ・トゥーレ(ストークリー・カーマイケル)の演説会で、人々の顔だけが、フワフワ浮かんで演説に没頭していっているシーンも不思議な演出でした。

そして、ラストは玄関をノックする音で始まるお得意の独特なカメラワーク。あのカメラが寄っていく変な演出。スパイク・リーらしさが出ててそれはそれで面白かったです。

本当のラストのドキュメンタリー映像はやはり衝撃的でした。