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ブラック・クランズマンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.0
 ヴィクター・フレミングの『風と共に去りぬ』の名場面、北軍が南軍の拠点を陥落させ、スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)と南部連合旗のクロース・アップで今作は幕を開ける。ボーリガード博士のブラウン判決、そしてD.W.グリフィスの『國民の創生』と矢継ぎ早にカッティングされる映像は、浮かび上がるKKK像を明らかにする。KKK(クー・クラックス・クラン)は白人至上主義を掲げるアメリカの秘密結社であり、白装束の三角頭巾を被り、黒人たちを袋叩きにした。今作はそんな白人だけの組織KKKにただ1人侵入した黒人刑事ロン・ストールワースの真実の物語を題材としている。1970年代前半、アメリカ・コロラド州・コロラド・スプリングス、街中白人警官ばかりのこの街に黒人警官が誕生する。だが同僚の白人たちの心ない嫌がらせにより、閑職に追い込まれたロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は潜入捜査官になりたいと署長に告げる。

 最初にブラック・パンサー党の演説会への潜入をミッションとした彼の潜入捜査が、その後に与えた影響は計り知れない。クワメ・トゥーレ(コーリー・ホーキンズ)の「武装せよ、革命が起こる」の言葉と、女性活動家パトリス・ダマス (ローラ・ハリアー)との運命の出会い。KKKを完全に出し抜いたはずのロン・ストールワースが犯した唯一のミステイク。それゆえに辻褄合わせに登場するフリップ・ジマーマン刑事(アダム・ドライバー)の入れ子構造のような黒人・白人の倒錯した関係こそは、黒人監督スパイク・リーの面目躍如だろう。黒人を忌み嫌うKKKは皮肉にも黒人警官の介入を許し、白いロン・ストールワースに蹂躙される。だが白い悪人たちの目は簡単に欺けない。KKKの入会儀式と通過儀礼となるD.W.グリフィスの『國民の創生』、それとクロス・カッティングされるジェローム・ターナー(ハリー・ベラフォンテ)のリンチ事件の独白は苛烈を極める。今作における『國民の創生』の流用は作品の映画史的意義を完全に亡き者にし、白人至上主義を標榜する者たちに憎悪を植え付ける。白装束の不気味な男たちと燃え落ちる十字架、トランプ大統領の演説から声高に登場する反転した「あれ」は、スパイク・リーの高く突き上げた拳そのものである。
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