マクガフィン

ブラック・クランズマンのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
2.9
重くなりそうな人種差別がテーマだが、黒人刑事が囮捜査のため電話で白人になりすますことをメタ的にし、アイロニカルとシニカルの絶妙な狭間にコミカルを含んで、社会性とエンタメ性をミックスさせたことに感心する。

しかし、主人公の警察になるまでの経緯や、警察になった後の動機や道理が曖昧なので、饒舌キャラ以外のマイノリティとしての情念が浅薄なことが問題に。アイデンティティもテーマとしているのに視覚化されていないことが残念。

また、訴えたいことは分かるが、ブラックスプロイテーション風味で、差別をする白人を大仰なマヌケに描くことや、演説や集会を対比的に描いても中立的な視点が無いことで、作品自体が不均衡にも。更に、アベコベに演じ続ける一貫性やサスペンスのスリルが足りなく、凸凹コンビの兼ね合いもイマイチに。

鑑賞前にスパイク・リー作品のアカデミー賞・作品賞ノミネートに驚いていたが、トランプ政権の人種差別問題の皮肉や風刺だけでなく、アメリカ・ファースト=白人至上主義で、黒人と同じくユダヤ系も差別していることがミソに。フリップのユダヤ人設定の脚色が無かったら、如何に。

娯楽テイストからの急転直下で見るものを突き落とし、色が消えて上下反転することでアメリカの現状を表す結末に驚かされる。しかし、135分の長尺は長いし、冗長もチラホラ。どうも、MSGの最前列で野次を飛ばす姿を見続けているからか、監督のエゴが詰まった故に感じるので、相性は良くない。