三樹夫

ブラック・クランズマンの三樹夫のレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.9
黒人警官が指揮兼電話役で、代わりとして白人警官がKKKに潜入するという、バディものやブラックエクスプロイテーションの定石を踏みながらも、スパイク・リーの情熱がほとばしり独特の映画が完成した。エンタメ度も高いしメッセージ性も高い。クワメの演説集会のアジりっぷりと長さが凄い。スパイク・リーの言いたいこと全乗せみたいな熱の入れよう。潜入捜査がバレそうになるサスペンスよりも、政治的メッセージの方が熱量が高まるのがスパイク・リーらしいなと思う。ただ、すんごい熱量の政治的メッセージの込められた映画だが、小難しくなく楽しめる映画である。
映画の舞台の1972年から現代へとつながり観るのが辛い映像が流れるが、これは、この映画内の状況は1972年に終わった過去の出来事ではなく、現在も全く状況が変わっていないということである。

作中でKKKの連中が描写されるのだが(メインで描かれるのは3人)、黒人やユダヤ人への差別心でしかつながっていない関係が心底気持ち悪い。KKKの連中は喋り方で黒人かどうか分かるという言う(そんなこと言ってるけど電話で話している相手は黒人という、KKKの連中は作中で徹底してバカに描かれている)。また、庭先に国を愛せない奴は出ていけという看板を立てている。そして、黒人やユダヤ人への差別感情を、犯罪とかそういったことで覆い隠そうとする(そんな薄汚い本心を見抜けないわけないが)。つまり、黒人は犯罪を犯すから云々と言って差別する。トランプがこういった連中に支持されているのは、差別してもいいような雰囲気を作り出しているからだ。作中でトランプのDD論(どっちもどっち)の映像が使用されるが、これは中立を装っているがオルタナ右翼側についているという詭弁だ。こういった冷笑系はツイッターに腐るほどいる。
『華氏119』もそうだったが、この映画は単なる他国での出来事というわけではなく、日本にとっても他人事ではない。話し方で黒人かどうか分かるというのはネトウヨの国籍透視と同じだし、ネトウヨも二言目には嫌なら出て行けというし、後ネトウヨってトランプ好きな奴多いもんね。トランプの作り出す差別してもいい雰囲気の差別対象の中にはアジア人が含まれているが、別にアメリカになんか行かないしとか思っているからなのか、それとも名誉白人とでも思ってるからなのか、よく白人至上主義者をアジア人が支持できるなと思う。
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