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ブラック・クランズマンのみおこしのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.2
今年のオスカー関連作品の中で最も楽しみにしていた映画の一つ。スパイク・リー監督による、熱いメッセージを孕んだ新感覚ラプソディに唸りました。中2以来の推しのトファー・グレイス氏とも銀幕で久々の再会でハッピー!(笑)

あらすじは割愛しますが、1970年代のアメリカ南部が舞台。黒人警官のロンがひょんなことからKKKに連絡を取ってしまい、ユダヤ人の先輩刑事フリップも巻き込んでの大潜入捜査が始まる...という、最高にファンキーかつドラスティックな作品でした。
『マルコムX』『ドゥ・ザ・ライト・シング』と、毎回あらゆる角度から人種差別の問題を掲げてきた監督。従来の作品に比べると、直接的にそのメッセージを訴えかけるシーンは少なめながら、物語が進むにつれてじわじわと問題の根深さを知らしめてくれる作品でした。知れば知るほど、KKKの狂気性を痛感し、日本人でさえここまで考えさせられるのだから、本国アメリカの観客はそれ以上に心揺さぶられるものがあったのは当然だろうな、と。
個人的オールタイムベスト1の『風と共に去りぬ』の某シーンの引用から始まるのですが、日々私たちが触れる作品たちは何らかの意図が暗喩されていて、一部の層から観たら名作でも、もう一部から観たら負の歴史に変わりないこともあるんだなと。もちろんこの映画を純粋に作品として好きという思いは変わらぬものの、そういった観点も忘れてはならないなと非常にシビアな学びを得たのでした。

先の読めない展開、ウィットに富んだ脚本は言わずもがな、これが実話を基にしているというのがまたすごい。恐ろしい題材ではありつつも、ユーモアも交えて決して悲観的になりすぎず描かれていたので、日本人の私にとっても観やすかったです。
デンゼル・ワシントンのご子息ジョン・デヴィッド・ワシントンが実在のロン役を好演、多くは語らないけれど熱い正義感と細やかな順応性を持ち合わせた役を見事に表現していました。本作でオスカーにノミネートされたアダム・ドライヴァーの、良い意味で肩の力が抜けたフリップ役も存在感抜群。「目」で語るシーンが多くて、鮮烈な印象でした。KKK側の有力者デューク役のトファーも久々の悪役がツボだったし、他にも憎たらしい演技で楽しませてくれる役者さんが勢ぞろいで、とにかく豪華すぎる演技合戦でした。おいしい役で往年の歌手ハリー・ベラフォンテも登場してびっくり!

CMに使われているテンプテーションズの"Ball of Confusion"を始めとするサントラや、作中で何度か引用されるブラック・スプロイテーション映画のくだりなど、まさにリー監督にしか描き得なかった"ブラック・カルチャー"の要素もリアルかつ作品にぴったりなものばかりで素晴らしかったです。

しかし、本作の凄いところはやはりあのラスト。映画が私たちに諭してくれることは数多くあれど、本物の映像ほどハッキリと正確にメッセージを伝えてくれるものは無いのだなとしみじみ。ラスト3分間、ただただ固唾を呑んで見守るしかありませんでしたが、諸問題は今もなお続いているという事実を忘れてはいけないですね。このエンディングには賛否両論あるようですが、そう言った意味では個人的にとても感銘を受けた演出でした。
意外と代表作をきちんと観られていなかったので、これを機にリー監督作品もしっかり観なければ。

同時期に公開中の『グリーンブック』と似た問題を孕みながらも、全く違う視点で勉強になる作品でした。
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