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ブラック・クランズマンの砂場のレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.7
今年のアカデミー賞関連で黒人差別をテーマにした3作をやっと全部見られた。『グリーンブック』『ビールストリートの恋人たち』そして本作『ブラック・クランズマン』。個人的な評価では『ビールストリートの恋人たち』と『ブラック・クランズマン』が圧倒的にすごく、『グリーンブック』は凡作という感想。しかし『ビールストリートの恋人たち』が人種差別問題を内省的に掘り下げていることとは対比的で、『ブラック・クランズマン』は政治的メッセージをストレートにぶち込んできた!!

まず驚いたのが、本作がアメリカ映画史への攻撃的なメッセージだ。いうまでもなく『風と共に去りぬ』とグリフィスの『國民の創生』の引用である。特に後者はKKKをヒーローとして描き実際にKKKの活動を復活、活性化したとして悪名高いのであるが、映画史的には多くの革命的な技法を開発した点で”歴史的な名作”とも言われる。左翼のゴダールも屈折した評価であろうが『國民の創生』を評価しているほどだ。ただ実際に今の時代あれを見るとあまりの酷さにアメリカ映画史の暗部を感じざるをえない、、あれからアメリカ映画は始まったのである。スパイク・リーは映画史を信じていると同時に映画史そのものを攻撃する。
スパイク・リーはタランティーノの『ジャンゴ』を批判していたが、それはタランティーノが映画史の人であり、もちろん彼自身黒人差別に反対であることは間違いないしブラックカルチャーをリスペクトしているのだが、スパイク・リーから見るとタランティーノにはアメリカ映画史への批評性が足りないと思っているのかもしれない。

本作は攻撃的な政治的メッセージだけの映画ではなく、軽妙なやりとりの中で過激な運動傾向については一定の距離を置いている。それゆえに主人公の黒人警官は過激な反差別運動に身を投じることはなく、警官=法を守るものとして生きることを決意するのである。原作にはないのだが白人をユダヤ人として設定した点にスパイク・リーの考えが現れていると思う、過激な黒人の反白人運動家の中には反ユダヤ主義を標榜するものもいるのだ。つまりブラック・ナショナリズム自体が自分たち以外を差別するという皮肉な構造を内包している。スパイク・リーはあくまでも仲間主義であり暴力革命を美化してるわけではないのだろう。本作はラストのドキュメンタリー映像などからどうしても過激な政治的メッセージが印象に残るし、それはそれで間違いなくスパイク・リーが主張したいことだろう、、しかし最後に白人と黒人警官の仲間が痛快なある解決をする場面はホッとするし、このような仲間主義が希望の光でもある。
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