潮騒ちゃん

ブラック・クランズマンの潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.2
この苦味と濃厚なコクは間違いなくブラックだ。鍛練に焙煎された演出。シャキッと痛快な語り口。カップの底に沈んだ歴史は漆黒よりも深い黒。彼らは今、カラフルな国旗を塗り替えようとしている。こんなにもエンタメでこんなにもリアリティな映画にはそうそう出会えない。なんという社会派ファンキー!燃え盛る怒りとゴキゲンな愛嬌を同時にガンガンぶつけられる。豪速球のそれを必死でキャッチするうちに名前のつかないエネルギーで満タンになっていた。「黒人刑事がKKKに潜入捜査」というオーマイガーな設定を白黒のバディで魅せる。本当に魅せられまくった。メッセージばかりが先行しない娯楽的要素が素晴らしい。ジョン・デヴィット・ワシントンが軽快に畳み掛ければ、アダム・ドライバーがぬぼーっと冷静に切り抜ける。間違いなく二つで一つ。冴え渡るユニークなコンビネーションはこの映画のスリルを磨きあげていた。二人が暴こうとするおぞましい実態はフィクションじゃない。今もごく当然の顔をして存在している。差別のこびりついた世界で生きるということ。戦うということ。スパイク・リーの震える怒りは猛スピードで突進してくる。最早「仲良く共存しましょう」と穏やかに説き伏せる気などないらしい。そのくらい乱暴にぶつからなければ動かないものをきっと彼は睨み付けている。国の外に出てしまえばわたしにも立派な色がつく。自分がイエローであることを忘れ、ブラックばかりを憐れむなんて呑気もいいとこ。自らの血に頓着している場合ではないのかもしれない。色分けされたこの世界でわたしも生きている。
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