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ブラック・クランズマンのHOHOのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.8
《映画の中のナチス③》
戦後アメリカのクークラックスクランへ潜入する刑事ドラマで、ナチスが関係するとは当然想定してなかったが、意外や意外、こんなところにもナチスとユダヤ迫害の影響が垣間見える。
クークラックスクランはいわゆる白人至上主義の集団であるが、一口で「白人」と言っても、見た目でははっきりとわからないユダヤ人も差別の対象だ。"有色人種"への憎悪はもちろん、ユダヤ人への嫌悪感も露わにする彼らだが、その中で印象に残ったのが以下の言説である。
「ホロコーストはなかった。あれはユダヤ人の陰謀なのだ」
その言説には、何も明確な根拠などない。ただ特定の人種への憎悪が先に立つ。白人である我々がこんな苦しい生活を強いられているのは、白人以外の奴らが悪いからだ、そんな悪い奴らが言っていることが事実のはずがない、と。
かつてナチスがアーリア人至上主義という立場をとり、栄華を誇ったアーリア人を貶めた存在としてユダヤ人を迫害したのと、全く同じ論理である。いや、論理とは言えない、感情論である。それが、ナチス消滅後も他の時代、地域で表れている。…しかも、これが既に終焉した過去の話ではないのだ。つい数年前にも、アメリカ国内で差別が顕著になった事件が起きている。
終戦し、ドイツからナチスの支配が消え、残った党員を訴追しても、ユダヤ迫害の元となったものは依然としてこの世界に根を張っている。その罪を、この作品は我々に突きつけている。
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