けいすけ

ブラック・クランズマンのけいすけのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.6
スパイク・リー監督
ジョーダン・ピール脚本
主演はあのデンゼル・ワシントンの息子、
ジョン・デヴィッド・ワシントン。
アダム・ドライバー助演。

昨今問題となっている警察官による黒人殺人事件。それがきっかけとなって勃発したデモの数々、今一度注目を浴びている「Black Lives Matter」。そんな情勢の中で、肌の色による差別と正直遠い存在の日本人として、この作品は鑑賞する価値が非常に高かった。

ストーリーは、1970年代にとある警察署で初の黒人警察官となった主人公ロンが、黒人解放活動家の運動と、白人至上主義団体KKK(Ku Klux Klan)へ、同僚のフリップと共に潜入捜査していくというもの。実話が基となった作品である。

物語を通して、KKKが邪悪なものとして描かれていることには間違いなく、その暴言の数々には、思わず眉間にシワが寄ってしまう。その一方で、黒人解放活動家のエネルギーも凄まじいものがある。冒頭のクワメ・トゥーレによる演説は必見だ。
双方のそれぞれの意見は水と油で、ついには正面衝突が起きるのではないかと緊張感が走る中、潜入捜査はあくまで第三者の立場であることを思い知らされる。この作品はKKKを退治する勧善懲悪のストーリーではないのだ。
1970年代勃興したブラックスプロイテーション映画の名は劇中に何度も並べられる。これらの映画は黒人が主人公でありながら、結局白人からした黒人の立場を逆転させただけで、衰退していった。今作では一方向の視点だけではなく黒と白のそれぞれの「暴走」に視点を向けている。そしてさらに、黒と白、だけではなくユダヤ人という要素も盛り込まれているのが巧妙である。
もともとフリップは自らがユダヤ人である意識が薄かったといえよう。まさしく日本人もこちらに当てはまるかも知れない。しかしKKKの潜入捜査を通して、自分のアイデンティティへの意識が萌していく。

ラストシーンはまさに衝撃で、2017年にヴァージニア州で実際に起きた事件の映像がそのまま映し出される。そして、KKKの主導者とトランプ大統領の映像が並べられる。差別主義者を擁護するかのような発言をする大統領の姿。
非常に強烈なメッセージが込められており、鳥肌さえたったが、まさしく今アメリカで起きていることが何か、「目を覚ませ」と問いかけるスパイク・リーの思いが詰められているのかもしれない。
けいすけ

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