大野

存在のない子供たちの大野のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
3.9
素晴らしいメッセージ性のある映画。
出生証明や児童婚、人身売買など、
日本では触れなさすぎて気にも留めない問題が、
今でも現実にいかに数多く残っていることか。

歳も分からず、ケチャップと比べられ、
それを真に受けなければならないって。

昔の出来事ではなく、
スパイダーマンやミニオンが出てくることから、
少なくとも2010年以降の、
中東を映しているというのも刺さる。

(ミニオンズは2015年だが、
 ミニオン自体は2010年の作品にいる)

キャストがほぼ全員素人らしく、
しかも役柄と似た境遇にいる人を、
キャスティングしたそうで、かなりリアル。

主人公の男の子も、
演技は初めてどころか、シリア内戦の亡命者で、

学校どころか難民生活をしつつ、
10歳からスーパーで働いており、

境遇のままだからこそ、
目線だけで伝わってくる心境など、
苦労の滲み方がすごい。

シングルマザー役のヨルダノスさんも、
難民育ちでホームレス経験者ってだけでなく、
撮影期間中に不法移民として逮捕され、
監督が保証人となり助けてたり。

ナディーン監督も、
舞台となっているレバノン出身であることや、
(詳しくは舞台はベイルート、レバノンの首都)

自身も女弁護士役として出演しているのも、
生々しい映像に仕上がっている要因かも。

個人的には映画としては少し退屈だったが、
ナディーン監督が、
優しい人だからこそだろうなと思う。

この手の作品にありそうな辛い描写は、
苦手な人への配慮だと思うが、
全くと言っていいほど挟まれておらず、

全体的に綺麗に撮られており、
それでいて監督が伝えたい想いは、
ちゃんと映画になっている。
大野

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