ぶみ

存在のない子供たちのぶみのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
3.5
両親を告訴する。
    僕を産んだ罪で。

ナディーン・ラバキー監督、脚本、ゼイン・アル=ラフィーア主演によるレバノン、フランス製作のドラマ。
自分を産んだ罪があるとして、両親を訴えた12歳の少年の姿を描く。
主人公となる少年ゼインをアル=ラフィーアが演じているが、公式サイトによれば、彼自身、シリアからレバノンに逃げたシリア難民で、貧しい生活を送ったとのこと。
物語は、ゼインが法廷に立っているシーンでスタート、以降、彼の回想という形で、裁判に至るまでの日々が綴られていくのだが、そこに描かれるのは、無職の両親のもと、戸籍がないため、存在しないことになっている彼の姿であり、満足な教育を受けることなく、路頭でジュースを売り、挙句の果てに妹が強制結婚させられるという、もはや耐え難い苦痛の連続。
それを、まるでドキュメンタリーを観ているかのようなリアリティ溢れる映像で伝えてくるため、没入感が半端なく、そんなゼインの心情は、モノに溢れ、平和ボケした国に住む私が想像してもしきれないものであることは、想像に難くない。
原題である『カペナウム』は、混沌、修羅場という意味があるらしく、修羅場が再現なく巻き起こる状況は、まさにカオス。
ゼインの行き着く先を黙って見守るしかなく、終盤、彼が放つ真理をついた一言に、心撃ち抜かれる一作。

心にナイフが刺さったみたい。
ぶみ

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