Rei

存在のない子供たちのReiのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
3.8
想像と違った。
これはセンチメンタルに浸って号泣する映画でも、理不尽さに強い憤りを感じる映画でもなかった。
もちろんスカッとする法廷モノでもない。
是枝監督の「誰も知らない」のように淡々とゼインの生活を描く。
幽霊のようにただ見守る事しか出来ない。

ゼインはまだ10〜12歳ぐらいだろうか。
お金のために親に売られる妹を必死で守ろうとしたり、ひょんな事で知り合った他人の赤ちゃんをその小さな体で知恵を使って懸命にたどたどしい手付きでボロボロになりながらも育てるのだ。

ここは日本ではない。
遠い昔の戦争中の話でもない。
シリアに起こっている現実、しかも決して特別な人の話ではない。

弱者は搾取され続ける社会。
刑務所の方が人間らしい生活を確保されている。
食事はもちろん、TVも見られて、お祈りの時間もある。教会から慰問に訪れるぐらい待遇がいいのだ。
つまりは困窮している子供達の存在が社会に把握されていないのである。

こんなにも賢く、責任感も強く、根気も行動力もある。
「立派で尊敬される人間になりたかった」
高い理想もある。
環境さえ違えば彼は望むものになれただろう。
そしてこの件で一部は明るみになったとしても、シリア難民の現状は変わっていない。

エンドロールでやっと涙を流す事を許されるような、そんな映画だった。