意外にも法廷物だった。
12歳の子供ゼイン両親を訴える。自分を産んだ罪で。
なぜ彼らが法廷にいるのか? 映画はそれを物語る。まず構成がいい。
タイトルは「出生届のない子供たち」という意。レバノンの貧民窟で産まれた子供たちは、働きながらその日を過ごすしかない。
出演者は役者ではなく、多くは演じる人物と同じような境遇にいる人たちをキャスティングしているらしい。
ドキュメンタリー的ではあるが、しっかりとしたストーリーがあって、でもとても自然でセリフっぽくなく見せている。
そしてそのストーリーがおもしろい。どんどん不幸になっていくが、たくましく生きるゼインにカメラは寄り添い、テンポもよく引き込まれる。
現実を見せるよりもフィクションを見せる方が現実を伝えることができるという映画の力をビシビシと感じる。
スケボーの上にヨナス(赤ちゃん)を入れたたらいを引っぱって移動するとシーンは、印象的に残る名シーンだ。
ゼインの優しさや怒りに何度も涙した。
今年、この作品を観なかったら絶対後悔した。