阿飛

帰れない二人の阿飛のレビュー・感想・評価

帰れない二人(2018年製作の映画)
4.2
贾樟柯監督の最新作。
監督は中国における時代の移り変わりをミクロな視点で捉えることが非常に上手な方だと思います。最初の作品「一瞬の夢(小武)」からそうです。
特に人の寂しさ、時代が移り変わることの寂しさと人間が本来的に持っている寂しさと、両方を丁寧に描写しています。本作でもそれを感じました。
国内のことをここまで丁寧に視ている監督がいるでしょうか。中国はこの点において幸せだと感じます。

主演の赵涛(Zhao Tao)は監督の奥さんなのですが、その目線も感じられるのが好きです。
トラン・アン・ユン監督とトラン・ヌー・イエン・ケーに似たものを感じます。視線の暖かさは似ているのに、生み出されるのは全く別物の映像だというのもまた面白いです。

ただ時代の移り変わりに囚われているからか、三峡ダムフェティッシュがたまに爆発していると感じるのは私だけでしょうか?

山河ノスタルジアにもあった、一昔前の中国の地方都市のディスコで更に一昔前の曲に合わせて踊っているシーンから漂う世の果て感が癖になりそうな中毒性があります。

「當愛情已經桑田滄海
是否還有勇氣去愛」
(愛は移ろうものと知って
それでもまだ愛し続ける勇気があるか)
迪克牛仔の「有多少愛可以重來」のどストレートな歌詞が刺さる、良い作品です。
阿飛

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