わかうみたろう

帰れない二人のわかうみたろうのネタバレレビュー・内容・結末

帰れない二人(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

晴れきらないで延々とくすんでいる空間が、グレーな生き方をする人々を包む.

前半は彼氏からもらって吸ってたタバコも後半では自分で火をつけて吸わなくてはならなくなる.
人との繋がりを強く求めるようになるにしたがって孤独になってく、ならざるを得なくなる主人公の女性の表情が心に残る.

中盤電車の中で男に言い寄られたときにかかってきた電話は誰からだったのだろう?檻の外で彼女と繋がっていたのは主人公男性だけなはず.
彼女は彼が企業の中で成功することを祈ってでなかったのか、彼を忘れるためにでなかったのか.
どちらにせよ、電話を切った時点で一人で生きていくことを決めたのだろう
廃れてくことがわかっててもその中で自然態で生きていく心が駅に降りて廃墟の上にUFOを見せたのだろう.

主人公女性はとことん自分の気持ちに素直な一方で刹那的には意外と生きれてない.
主人公男性にフラれた後に電車であった男とは手を繋がないしキスもしない.
そんな風に不器用だからこそ日本の歌謡曲風コンサートでは他の観客よりも感傷的に音楽を聞き入るし、サビ部分の歌詞のコールアンドレスポンスが終わった後も歌手と一緒に歌ってしまう.

そういう人は渡世人としてグレーな存在として生きていくしか生きる方法がない、白黒ハッキリさせなければならない企業の世界では心を濁らせて生きねばならないから.
英語タイトルのash is purest whiteは本当に綺麗な名前.


一方でプライドが男を弱くさせる.
渡世人としても企業人としても生きていけなかった男は自分を恥じ女の元を最後に去る.
だが、彼も結局は刹那的な流れに身を任せられなかっただけでこの二人は同じだと思う.
違うのはヤクザとしての男性の価値観はきっと企業の世界の価値観と似てしまってるもしくは同じだからだろう.

この主人公男性、体も悪いなかで去るのだが、きっとのたれ死ぬか自殺するかしか道がないように思えてくる.
仕事もできない、プライドで人に頼ることもできないじゃあ生きてけない.

けど主人公女性が町で瀕死になった男を見つけてまた一緒に住ませようとするんだろうな.

愛だけじゃ埋まらない孤独があるし、それでも誰かと生きたいって孤独よりも強い感情がある気もした.

YMCAの曲やJPOPに似た歌謡曲など日本と通底しているものが多々あるし主人公たちは日本社会を生きている人々と何ら変わらない存在でもある.
オリンピック会場の跡地を歩く彼らの姿から日本の未来から射す霞んだ光の粒子が2019年現在の日本のネガに焼き付いた.
数年後にプリントしたらその写真はどのように見えるか、恐ろしくもあるがそこに美しさを感じれるようにグレーに純粋に生きたいと祈るばかりだ.


ps.ラストの監視カメラのシーンは、ああいう人が実は多くいるということなのか、機械的な視線しか注げない人々を表すユーモアなのか、
少なくともあの画質の悪さからのっぺらぼうに見える顔からさえも表情が見えてくるのは女優の凄さかな.

pps.長回しは好きだ、観客に見る余裕を与えてくれる

ppps.中国歴史に詳しくないのに感じるものがあるって不思議だけどそれこそ魔法的