Yui

バハールの涙のYuiのレビュー・感想・評価

バハールの涙(2018年製作の映画)
3.9
女性弁護士のバハールは、家族と幸せに暮らしていた。しかし、過激派組織ISの襲撃を受け、女は売買、少年達は戦闘員になる事を強制される。逃げ出したバハールは息子を取り戻す為、女性武装部隊を結成し、戦いに身を投じる。

2014年、ISがクルド人自治区を襲撃した事件に着想を得て作られたという本作。つい最近の事だし、今も尚この状況が続いているというのが悲しいけれど、いくらでも残虐に作れる描写をあえてR13にしている事に感銘を受けた。『戦火の馬』もそうだったけど、これからを生きる子供達にも観てもらいたい作品になっている。

それでも、観終わった後にR13だったんだと知ったくらい、辛く苦しく、死と隣り合わせの地獄の日々。そんな中、何度心を打ち砕かれようとも、また立ち上がる彼女達の決意の強さと勇気に涙が出た。

子供をただの戦争の駒としか見ず、女を性処理の道具としか見ないIS。殺し合いの隣にはいつも女が、そして子供も性処理の道具にさせられてるよね。ただでさえ地獄なのになんでまた地獄を味合わなきゃいけないんだろう。
男達が野蛮で下らない殺し合いを続けている最中、命を宿しこの世に産み落とし母乳を与え守り育てているのは女。なんなんだろうこれはと理解が出来ない。国や宗教が違うだけで、こんなにも違ってしまうものなの?


女であるという尊厳を冒されたら、女であるという尊厳を以て立ち上がるしかない。

「女 命 自由」
悲しいくらいに、深くて重い言葉だった。


一度も笑顔を見せず、眉間にシワを寄せていたバハール。そんな彼女が、とても強くて美しかった。ただ、それがとても悲しかった。
そんな悲しい強さと美しさを持った彼女のような人が、現実にきっとたくさんいるのだろう。そんな彼女達が、一刻も早く心から安心して笑い、夜を眠れる事を願うことしか出来ない。

もう少し私に知識があれば~と思った作品。背景をきちんと分かっていたらもっと理解が深まったと思う。とはいえ、難しい訳ではないので色んな人に観て欲しい作品です。


劇中、自爆戦闘員のことを「kamikaze」と呼んでいてびっくり。なんとも複雑な気持ちになりました。


2021-363
Yui

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