まめまめちゃん

バハールの涙のまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

バハールの涙(2018年製作の映画)
3.8
バハールは弁護士で夫と息子の3人暮らし。ヤズディ教徒の住む地域の実家に帰っていた時にIS(イスラミックステート)の襲撃に遭い、親と夫を殺され息子を誘拐され自身は奴隷として売られてしまう。救済活動をしている女性の助けを借りて仲間と脱出したのち、息子を救い出し自由を手に入れるために抵抗部隊を組織し、クルド人武装勢力と共に前線に立つバハール。彼女の姿を、戦地で夫を失ったフランス人女性ジャーナリスト:マチルダの目を通して描く作品。

前線のバハールとそこに至る過去のバハールが交互に描かれるが、ゴルシフテ・ファラハニの演技がまるで別人でかえって時系列の行き来がわかりやすくなっていた。

周知の通りイスラム圏は男尊女卑社会。
驚くのが「女に殺された男は成仏できない」
「女を売買しても罪に問われない」である。
弁護士になるその努力が報われるとか報われないとか以前に、次に目を開けた時生きているかもわからないような現実の中にいるバハールたち。マチルダと同様に目を奪われ息をのむ。そして動けば今隣にいた誰かが銃弾に倒れ地雷に倒れる毎日。それでも奴隷でいるより遥かに「死」が近くても「生」を感じられるのだ。

本作にはたくさんのことが描かれているけれど、希望を見たいがために、厳しい現実から目を背けているのではないですかという、マチルダの終盤の言葉に本作の主張がこめられているような気がした。