Eyesworth

イメージの本のEyesworthのレビュー・感想・評価

イメージの本(2018年製作の映画)
4.7
【要素のコラージュ、理解の橋】

フランスの巨匠ジャン・リュック・ゴダール監督の2019年の作品

〈あらすじ〉
「私たちに未来を語るのは“アーカイブ”である」と語るゴダールが、過去の絵画、映画、テキスト、音楽をコラージュ。現代の暴力、戦争、不和に対する怒りをこめ、世界が向かおうとする未来を指し示す。ゴダール自身がナレーターを務め、全5章で構成される…。

〈所感〉
「恐ろしく難解な作品…俺でなきゃ理解できないね」といつか言える日を夢見てるが今はまだその域に達していないことを痛感させられる。諸行無常、行雲流水、ゆく河の流れは絶えずして、流れゆく雲のように形を変えて我々の目の前に提示される事象のパズル。こうした言葉、文学、音楽、絵画、映像といった要素のコラージュ(寄せ集め)を眺めていると、自分が保持するイメージとゴダール監督の保持する断片的なイメージの量と質の圧倒的差に愕然としてしまう。もはや我々との共有知が無いため、独り善がりにも見えてしまうが、理解の橋はまだ断絶されていない。我々にできるのはその橋が崩れ落ちる前に恐る恐る渡りきる努力をすることだと思う。どんな天才でも、どんな凡人でも、すべての創作は必ず五本の指から始まる。その当たり前の事実に漠然とした勇気を貰える。掌の中にストーリーは用意されている。それを解き放つか否か、それだけの違いだろう。

以下、お気に入りフレーズ・金言👇🏻

「物言わぬ田舎娘にこそ用心すべきだろう」
「五本の指、五感、五大陸」
「人間の真の条件は手で考えること」
「言葉には命の痕跡しかない」
「映画と同じようにすべてが語られるべき」
「偏見が生じるのは物事を知らないからではなく自分を知らないからだ」
「悲しみ方が足らないから世界は良くならない」
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