あくとる

ドッグマンのあくとるのレビュー・感想・評価

ドッグマン(2018年製作の映画)
4.0
"絶対的な主従関係と尊厳"

人並みに社会生活を送っていたら、誰しもがどこかで観たことある関係ではないだろうか。

主人公マルチェロは自分の意思が弱く、他人に言われるがまま行動する。
根っからの子分気質が染み付いており、会う人対していつも作り笑顔を浮かべている。
とにかく冴えなくて弱々しい男。
暴君シモーネは絶対だし、自分の娘や犬にさえも指示されて従う。
立場が弱いゆえにいつもシモーネにいいように遣われて、誰よりも怯えている。
このマルチェロを演じたマセーロ・フォンテの演技が繊細かつ自然で本当に素晴らしい(どこか自分自身を観ているようでもあった…)。

手のつけられない暴力の権化シモーネ。
何事も力で解決しようとする思考の幼さ。
道理の通らなさが恐ろしい。

この二人の関係が行き着く先とは。
恐怖による支配は人間の尊厳を拗らせ、平穏を保っていたはずの日常は破滅へと向かっていく。
人間の弱さ、情けなさを描いた自分好みの厭な人間ドラマ。
撮影、演出、演技。
どれをとっても上質です。

どんな人間関係であっても、互いに最低限の"敬意"を払わなければならない。
人間として当然のことだが、決して忘れてはいけない教え。