Monsieurおむすび

ドッグマンのMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

ドッグマン(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

イタリア映画祭2019にて。

寂れた海辺の町で犬のトリミングサロンを経営するマルチェロは、娘と犬をこよなく愛する温和な男。
町の人との関係も良く、慎ましくも幸せな生活を送っていた。
唯一の悩みは暴力的な友人シモーネからの麻薬の横流しや強盗への無理矢理な加担などの支配的な関係だけ。。。

平凡な日常に潜む人生のエアポケット。
マルチェロ本人ですら入ってしまった事に気づかず、シモーネの支配からの脱却を目指しながら、いつのまにかそんな自分の置かれている「状況」に支配されていく怖さを描いた不条理劇。

同情へとミスリードする演出と薄皮一枚で展開していく奇妙でサイコな心模様。寂寥のスクリーンに力強く鋭利に、そして巧みに人間の業が刻まれる。

魔がさしたのか?
悲願だったのか?
ラストの長回しが捉えるマルチェロの表情には人間らしい感情の欠片も見て取れず、自身が肥大させ続けた内なる獣性に呑み込まれた哀れな男の虚ろな目が印象的。

誰にでも優しい彼の根底に渦巻いていた感情は何だったのか?
自分の世界から突き放された彼同様に、私の思考もいつまでも虚空を彷徨うだろう。

マルチェロを演じるマルチェロ・フォンテの怪演に尽き、それはシモーネ以上のとびきりの悪役にすら写るから不思議である。
カンヌでも主演男優賞も納得。
Monsieurおむすび

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