のほほんさん

ドッグマンののほほんさんのレビュー・感想・評価

ドッグマン(2018年製作の映画)
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かつては明るかったかもしれないが、今となってはゴーストタウン化の一歩手前、寂れて何の魅力もない、住民の諦念が蠢くかの様な街。イタリアのイメージとは程遠すぎて、オシャレなイメージしかないあの国にもこんなところがあるのかと逆に関心する。
その街に巣食う、力だけは強いからタチの悪いクズに翻弄される、娘と犬を愛する小男。
街の仲間がそのクズを排除しようと相談している時も加わらず、彼の為にコカインを仕入れ、彼が撃たれれば介抱し、彼の犯罪にも肩入れする。

日本でもなんか馴染みのある構造。地元でいつまでも幅利かせてるクズと先輩・後輩の関係になっちまったばかりにそこから抜け出せない感じ。

この構造で特に残酷なのは、彼が文字通り身体を張って払う犠牲については、クズの方は何とも思っちゃいないこと。そしてそのクズに対しては何も言えない連中も、立場の弱い彼に対しては正面切って排除を展開すること。

ラストで彼が起こす事件も、これまでとは比べ物にならない重大さなのにもかかわらず、彼の孤立はなんら変わる事は無い。

でも、犬だけはどんな時でもどんな人でも、ずっと近くにいてくれるんですね。唯一にして最大の救い。

登場人物に魅力がある訳でもなく話も陰鬱なのに、何故かグイグイ惹き込まれた。何とも面白い作品だった。