寂れた片田舎の閉じた人間関係。
このままこの町で一生を過ごすと思うと、きっと暗い気持ちになる。
マルチェロもシモーネも、そんな町に適応し切れず、はみ出し者である点では共通している。マルチェロは店をかまえ、仲間とフットサルにも興じているが、溶け込めていないように見える。シモーネもまた、町を出ていけない苛立ちを周囲にぶつける日々のようだ。
はみ出し者同士が、他に相手がいないから仕方なくつるんでいるというのは、よくある話だろう。それは、お互いに都合よく利用し合う関係でもある。
気弱なマルチェロが、夜のクラブで女性と話せるのは、シモーネがいるからだ。
マルチェロはシモーネと対等のつもりでいるが、シモーネはそうではない。そのズレが、ジワジワとマルチェロを追い込んでいく。
逮捕されても、犯人の名前を明かさなかったのは、まだシモーネと対等であり、出所すれば分け前がもらえると信じていたからだが、その期待を裏切られた時、ついに怒りが爆発する。
その怒りは、これまでの仕打ちへの恨みつらみだろうか。そうではなく、これまでシモーネをうまく飼い慣らしていると思っていたのに、それが勘違いだったと思い知らされたからではないか。
シモーネを監禁したのは、復讐と言うより、自分が主人だと確認したかったのだと思う。狂犬をも手なづける自分というのが、マルチェロのアイデンティティだったから。
シモーネを失ったことで、マルチェロはそのアイデンティティを失った。茫然自失した表情のラストからは、その喪失感が表れていると感じた。