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誰もがそれを知っているのkissenger800のレビュー・感想・評価

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)
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なるほど『別離』(2011)レビューで自分が書いた“他の監督作も見たいが配信期限あとわずか、みたいなきっかけが無いとなかなかねーバカ映画好きにとってはねー”って呪いがそのまま成就していてちょっと笑う、アマプラ配信終了間際の駆け込み視聴。

なんですけどニューヨーカー(ええ、みんな大好き「フレンチ・ディスパッチ」ね)2022年11月7日号、あまりに長くて余白最小設定でPDFに書き出してもA4判49ページになった初出タイトル“A Reckoning.”(清算)って記事-その後改題されて"Did the Oscar-Winning Director Asghar Farhadi Steal Ideas?"(オスカー受賞監督ファルハディは盗作したか)-を読んだうえだったのでいろんな感想が有るんだがその話は最新作をいつか見る、そのときまで温存しておこうと思います。なぜなら自分のなかでまだ考えが固まっていないから。

簡単に記事の要点だけ申し上げておきますと(親切)
・この監督の「ひとのアイデアを自分のものにしてしまう」癖は現場を共有した人間なら誰でも知っている
・だから本作タイトルを知ったとき業界全員が下向いて笑った、とほかならぬアカデミー賞受賞作主演女優が語っていました
・ちなみに最新作が裁判沙汰になり、かつ監督の旗色がきわめて悪いのは周知の事実です
・宇多丸がラジオ番組で最新作の擁護をしている細部への感想とか書いてたら全然この作品の話が出来ないじゃないですかー
・なおこの作品も改稿に次ぐ改稿で、小津安二郎における野田高梧ぐらいの稼働をした人物をthanks toだけで済ませているとかなんとか

ええとね、太宰治が、林芙美子が、あるいは石川啄木がどうしようもない連中だったコトと、彼らに才能があったコトは残念ながら並立するわけでして、ファルハディの映画監督としての才能を疑う必要はないのと同じぐらい、彼が作品アイデアを他人からかっぱらって、しかもそれを認めようとしない人格の残念さ。は、私のなかでは揺るぎない認知に至っており。そういうとき、自分のなかで非難がどこに向かうかっていうと当事者ではなく「本邦メディアはサボってないで仕事しろ」なの、我ながらちょっとアレなんですが。

そんな心理的雑音が鳴り響く環境下で見たうえで申し上げると、結局一瞬も目を離す気になれなかったし、それでいてこの監督の作品中ではいたって平均的なアウトプットなことも分かるっていう、いやもうむちゃくちゃ面倒くせえな。
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